第一章
「おはよー!明日だね、特別旅行!!」
「あ?別に俺は楽しみじゃねぇってんの・・・。」
「えー?何で?スッゴイ楽しみじゃん?色んな人来るんだよ?」
「別に俺は関係ねぇ・・・」
「ふーん。あ、あたし今日こっちだから!また明日・・・ね、亮!」
「はいよ。じゃあな。」
また歩き出す。
二人から一人へと人数の減った寂しさがヒョッコリと襲ってくる。
バスに乗る為に、バス停へと行く。
途中、二人のサラリーマン風の人たちの会話が聞こえてきて、耳を傾けてみる。
「なぁ、明日だろ?」
「あぁ、らしいな。」
ここまでの会話じゃなんのことかさっぱり。
「ったく、政府もよくやるよな。」
「まったくだな。可哀想だよ、ホントに。」
「BR法なんて、子供にやらせることじゃねぇよ。」
「!?」
思わず二人をじっと見てしまった。
でも、あの“BR法”という言葉が出てきたんだ。
15歳、14歳の中学三年生が無人の島で殺しあう・・・。
優勝者は、たったの一人で、その人しか家には帰れない。
そんなBR法が明日!?
あたし達だって、旅行だけど、ありえない・・・よね?
そういって、自分で否定する。
「今度の参加者は特別らしいぞ。」
特別・・・?
「中二、中三が参加者らしい。」
嘘だ。
あたし達って、当てはまってる?
もし、決定的な言葉が出た場合、それはほぼあたしたちになるだろう。
そうして、じっくりと耳を傾けて聞く。
「それは、どんな子たちなんだ?」
「・・・なんでもサッカー選抜の子たちだそうだ。」
動きがかたまる。
今、90%くらいの値でほぼ確信した…。
今回の参加者はあたし達だ…と。
あたしは走った。
すれ違う人々にドンドンとぶつかりながらも走った。
目指すは三上…亮。
そして西園寺玲監督。
でも、そんなにずっと走り続けられるはずがない。
ただでさえ、体力はないのだから。
途中で河川敷に座り込んだ。
息が上がって、呼吸をするだけで精一杯だった。
ゴロンと寝転んで落ち着こうとする。
その辺の地面や空気が冷たくって、気持ちいい。
だから、目を瞑った。
それがあたしの第一の失敗。
ぐっすりと眠ってしまったんだ…。
「あのー…先輩ですよね…?」
名前を呼ばれた事ではっと目を覚ます。
「あ…れ?将くん?何で?」
「ここ、僕ン家の近くの河川敷なんですよ。サッカーの練習に来たんですよ。ほら…」
そう言って、将君の指さした方向には、サッカーゴールの線。
「そっか…。」
「はい。あ、先輩も気をつけてくださいよ?こんな所に一人で寝てたら危ないですし、それにもう真っ暗なんですから。」
真っ暗…?
そう思って辺りを見回せば、既に空は闇の中。
「ヤバッ、ゴメン将君。行くとこあるんだ。また今度、一緒にサッカーしようね!あ、それと明日早いんだから、ほどほどにね!」
「あ、はい。」
本来の目的を思い出して急ぐ。
「それじゃあ、『また明日』ね。」
「はい!」
ここが失敗第二…になるだろう。
何故この時あたしは、将君に言わなかったのだろうか?
あれから再び走って、監督の家まで辿り着いた。
これからが失敗第三番目。
一番大きな失敗だったかもしれない。
「監督!監督!!」
呼び鈴を鳴らして、ドアを叩きながら叫ぶ。
「あら、じゃない。どうしたの?」
のん気にのほほんと言う監督。
全く…なんて呆れそうになる。
「明日…旅行でしたよね?」
「えぇ、そうね。もう準備なんかは進んでいるのかしら?」
「そんなことより、明日の旅行…取り消してください!お願いします、西園寺監督!」
「何でいきなりそんな事を言うのかしら?」
「バトルロワイアル…」
その言葉を口にしたとき、監督の眉がピクッて動いた気がした。
「バトルロワイアルって、あのBR法のことかしら?」
普通通りにしようとしている監督がそこには居た。
「そうです。その…今年の対象って…あたし達だって聞いたんです。監督は何か知りませんか?」
「ど、どこでそれを…聞いたの?」
明らかに動揺している。
「バス停で。サラリーマンかな?そんな男の人達が話しているのが聞こえたんです。」
「そう…。そうだったの…。…貴方は知ってしまったのね…。」
「え?」
この言葉はどういう意味かわからなかった。
そうして監督は今までにあたしが見たこともないような顔をして、こっちを見ている。
正直言うと、凄く怖かった。
「ごめんなさいね、。」
監督の声を聞いて、後頭部に痛みが走った。
何が起きたかはさっぱりで…。
そうして、あたしの記憶も意思も途絶えた。
バスの中―――――――
メンバー達の楽しげな声が聞こえる。
「監督−!ちゃんどうしたんスかー?」
「お家の都合でね、現地に集合することになったのよ。」
「そうだったんスかー。ってことは、ちゃん遅れても、ちゃんと来るんスよねー?」
「えぇ。」
「よかったー!」
そんな会話が続く。
が居ない事に対して、特に変わった事はなかった。
でも多分俺だけだと思うんだ…。
「なぁ、藤代。何だって?」
「あ、三上先輩。どうしたんスか?ちゃんの事聞いて…。」
「別にどうもしねぇ。で、どうしたんだ?」
「なんか、家の用事らしいですよ。」
家の用事…?可笑しいぜ?
監督の様子は妙に変だし、その前にには家族がいねぇ。
もう既に皆あの世に逝っちまってんだ…。
他殺…だったんだ、アイツの家族は皆…。
アイツの父さんも、母さんも、爺さんも、婆さんも、兄貴も、妹も、皆な…。
それから確か施設に行ってたって聞いたんだけどな…。
俺とアイツ、幼馴染だったけど、施設に行くからって別れて、再開したのとかつい最近だしな…。
ったく、どうなってんだ?
そんな時、西園寺監督の方からカチッという音がした。
何の音なんだ?って最初は考えてたけど、それから段々と眠気が襲ってくる。
皆も眠たくなったのか、眠り始めた頃、誰かが叫んだんだ。
「何処に行ってん…」
そこまで言った時、叫んだ誰かが倒れた。
ドサッという鈍い音をたてながら…。
「静かにしなさい…。寝ている人だっているのよ?」
唖然ととして口が閉じない。
その誰かというのは倒れているのを見て、誰かが『鳴海!』って叫んだから鳴海って奴だということがわかった。
「おい、鳴海!」
「やめろ、谷口!」
谷口…?東京選抜かどっかの奴か?
俺には知らない奴ばっかりだな…。なんて、のん気なこと言ってる場合じゃねぇ…。
何で、何であの女監督は、右手に銃を握ってるんだ?
「静かにしなさいと言ったのよ。それに勝手に動かないで頂戴。」
不気味な笑顔を見せるあの監督に対して、谷口という奴は、鳴海の名前しか呼んでない。
その時に「谷口―!!!」って誰かの叫ぶ声がしたんだ。
でも、その声もかき消された。
たった一発の銃声に…。
誰の声だったろうか…?
「急遽、変更します。アイマスクとヘッドフォンを配るので、着用してください。そして、何も喋らないで。まぁ、この子達みたいになりたければ、別なのだけれどね…。さあ、どうするのかしら?」
スゲぇ威圧感があって、動くこともままならない。
全てが監視されているかのように思える。
女監督は、平然とアイマスクと、ヘッドフォンを配り始めた。
俺の所にも配られて、指示された通りに着用した。
理由は、殺されたくないからだ。
勿論それだけじゃあないんだが…。
何が起こるかさえわからない暗闇の中へと引き連れていく。
恐怖もついてくるという最悪の暗闇で、ココに居るメンバー達は何を考えるのだろうか?
―――家族の事?
―――友達の事?
―――サッカーの事?
―――生きる事?
―――死ぬ事?
―――谷口や鳴海の事?
一人一人それぞれの想いを乗せて、バスはどこまでも走り続ける。
きっと床には、ダラダラと二人の血が流れてるんだろうな…。
そんな時、監督の呟きが聞こえた。
「フフッ、ゲームの始まりよ。」
今、至上最悪のゲームの幕が切っておとされた。
ゲームは…はじまった。
鳴海 貴志 死亡
谷口 聖吾 死亡
【残り 36人】