ズー -ZOO-


「ここがノースガッケンですか?」

「あぁ、そうだ。本部からの情報では、ここの山奥に我々の仲間となりうる者がいるらしい。」

彼らの名前はウカ(♀)とバッカス(♂)である。

「確かズーという名の少年だ。お前と同い年らしいぞ。」

「そうなんですか?ちょと楽しみ・・・。」

「そうだな。今までお前と同い年のやつはいなかったからな。」






その頃・・・山奥、ズーの家。

家と言っても木の葉で作った外装の中に、木のベッドがあるだけである。

ズーの肩の上で猿が鳴いた。

「そうか、腹が減ったのか。よし、メシにしよう。」

ズーは動物の言葉が解るのであった。

食料となる木の実を採りに向かうズーの後ろには一人の男がいた。

「ククク・・・今日の獲物はあのサルだな。久々の獲物だ。腕がなるぜ。」

そんなこととは知らず、その男が罠を仕掛けた木にまんまと猿を登らしてしまった。

罠と気付いた時にはもう遅かった。

猿の小さな体が網にからまる。

「クハハハハ、まさかこんな簡単な罠にかかってくれるとはな。」

「オマエ、そいつをどうするつもりだ!?」

「決まってんだろ?売り飛ばすんだよ。」

「そんなことさせるか!」

とは言ったものの、ズーに武器はなかった。

相手は銃を持ち、猿を人質にとっている。

『どうすればいい?』

心の中で呟いた。

その時、動物たちの声が聞こえた。

「オレたちの名前を呼べ。そうすればいつでも駆けつける。」

半信半疑にズーは試しに、

「鹿よ、後ろから奴の銃を落としてくれ。」

と言ってみた。

すると、男の背後から鹿が突進してきて、男の銃をはじき飛ばした。

「何っ!?」

ズーはこれなら倒せると思い、

「熊よ、その力で奴を倒してくれ!」

と叫んだ。

するとまたどこからか熊が現れ、男を鋭い爪で切り裂いた!

男は、

「この借りはいずれ必ず返す・・・!」

と言い残し、逃げてしまった。

ズーは網にからまった猿を助け出し、抱き抱えた。

「動物を呼べば現れてくる。これは一体・・・?」

「それはお前の動物を操る力、『アニマル』だ。」

ずっとズーの後をつけていたウカとバッカスが現れた。

「私達はあなたの力を必要としているの。お願い、力を貸して!」

ウカが言う。

ズーはわけがわからず言った。

「あんたらは一体何者だ?」

「我々はオール・・・いや、元オールガッケン幹部だ。スコッティズを討つため有能な者たちを集めている。」

バッカスが答える。

「スコッティズを倒すと森は広くなるのか?」

ズーはオールガッケンの名前を聞いた時から気になっていた事を聞いた。

森が広くなれば動物たちの住む場所も増え、絶滅しようとしている動物をも助ける事ができるからだった。

「広くなる。」

「本当に!?」

「本当だ。」

「じゃあ動物も増えるって事だよな?」

「あぁ、増える。」

「・・・・・・わかった。動物が増えてみんなが暮らしやすくなるんだよな。だったら協力しないわけにはいかない!」

「そう言ってもらえると助かる。」

「何をすればいい?」

バッカスはめんどくさそうな顔をして、

「ウカ、説明してやれ。」

と言い、切り株に座り込んだ。

「バッカスさんっていっつもめんどくさそうな顔をしてる・・・・・・。まぁいいわ。わたしが説明してあげる。」

ウカの話によると、司令官のダリアは水面下で既に動いているらしく、ズーたちにはスコッティズの傘下や支部を潰しながらダリアのところへ合流してほしいとのことだった。

「そういえばあんたらの能力は?」

「まだ説明していなかったな。」

無言で促すバッカスにウカはムッとしながらも話始めた。

「私の能力はウインド。文字通り風を操る事ができるの。」

ズーはウカの話を聞きのがさまいと真剣な顔をしている。

その顔を見ながらウカは続けた。

「バッカスさんの能力はフレイム。炎を操る事ができるのよ。」

「へぇ〜。」

とズーは呟き感心してみせた。

その時、後ろからガサッと音がした。

「誰だっ!?」

とズーが振り向くと、先程の男が数人の仲間と一緒に銃を向けていた。

「クックック、さっきのお返しはさせてもらうぜ。」

男は生々しく赤に染まった包帯を指差しながら言う。

すると、バッカスが重い腰を上げ、

「ズー、いい機会だ、我々の能力を見せてやる。」

と言ったかと思うと、両腰に差していた銃を抜いた。

「先手必勝だ!」

と男が引き金を引く前に、ウカはなにやら呟いていた。

すると、どこからともなく風が吹き、男の銃弾を弾き返した。

「なに・・・!?」

男は動揺を隠せないといった顔をしていた。

「バッカスさん、今ですよ・・・!」

バッカスは、

「言われなくても分かってる!」

と返したかと思うと、にわかには信じがたい早撃ちで敵を全員倒してしまった。

何が起きたのかさえズーには分からず、唖然としていた。

「どうだ、何か分かったか?」

とズーは聞かれたが、ポカンとした顔のまま首を横に振った。

「そうか。」

「まったく・・・バッカスさんって意地悪ですね、能力も全く使ってないし・・・」

「え!?使ってなかったのか?」

「フッ、そんなことも分からないようじゃあまだまだだな。」

バッカスはめんどくさそうに何故能力を使ってなかったのか説明し始めた。

「知っての通りオレの能力はフレイム。炎を操る事ができる。でもこんな森や水辺等では使えない。わかるよな。」

「炎が消えたり被害がでかくなったりするからか。」

「だからそんな場所ではコイツを使ってる。」

バッカスは両腰に差している銃を叩きながら言う。

「・・・・・・」

納得した様子のズーにバッカスは

「まあ、また見せてやるよ。」

と続けた。

「さて、本題に戻るぞ。ウカ〜」

バッカスはウカを呼ぶとすぐその場に寝転び大きないびきをかいていた。

ウカは溜め息をついたあとズーに向かって話し始めた。

「まずはここから南に少し行ったところにスコッセロという街があるから、そこにいくわ。そのあと、プライムスイコーセというダリアさんとの待ち合わせ場所に行くの。分かった?」

ズーは必死に今聞いた街の名前を頭に刻み込みながら返した。

「まずはスコッセロだな?」

「ええ。でもあそこはスコッティズの占領下にあるから油断は出来ないわよ。」

ウカは、

「そういえばアンタ・・・」

と言ったズーの言葉を遮り、

「ウカって呼んで。」

と言った。

ズーは

「ゴメン、ウカは能力を使ってたんだよな」

と聞いた。

ウカは

「ええ、そうよ。」

と素っ気なく返した。

森を出発してしばらくすると三人とも和やかな雰囲気になっていた。

次の街で何が起こるかも知らずに・・・・・・。









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