伝えたかった想いを伝えた。
でも、貴方は受け止めてはくれなかった。
受け止めてもらえなかった悲しみを、どこにぶつければいいのでしょうか?
あなたは、どこで弱くなれますか?
あたしは、どこで弱くなれますか?
私の弱さ
伝えたかった想いを伝えたのは…たった今。
「あたし、先輩が好きです」
あたしの好きな人は、1個年上で同じ委員会の先輩だった。
いつも明るくて、一緒に話したり、仕事をしてたら楽しくて、気づいたら好きになってた。
別に、伝えなくてもよかったんだ。
見て…一緒に話したりするだけでよかったのに…。
なのに、あたしは転校することになったんだ。
本当は、ずっと伝えないつもりだったのかもしれない。
あたしを“伝える”方向に向けたのは、日生光宏だった。
『!』
『あぁ、日生か。どしたの?』
『お前、転校するんだってな。』
『うん…』
あたしは、残念そうに言った。本当にそうだったから。
日生とあたしは、仲がよかった。
幼馴染とか、そういうわけじゃなかったけど、話してたら面白かった。
日生は、あたしの相談相手でもあった。
だから、先輩のこととかを相談したりしてた。
『あーぁ。俺さ、のこと好きだったのにな』
ビックリした…。あたしは、日生のことを友達だと思ってたから。
って、あたし先輩のこととか普通に相談してた…。
あたしってば最悪な人じゃん。
『日生…あたしさ『好きな人、いんだろ?』
『知ってるでしょ、日生なら。』
『そりゃそうでしょ。でも、俺はそれをわかって言ってんだぜ?俺さ、お前が転校するって聞いてすげーショックだったんだ。俺もいつか転校するだろうし、お前がこっちに戻ってきても会えないかもしれねぇ。だから、伝えられるうちに伝えとかねぇとって思ってさ。』
『日生…』
あたしが日生の気持ちを受け止められない。
それを知ってても言ってくれた日生は、強いんだ、本当に。
ゴメン…ね。
『断られるのわかってっから、返事はいいぜ。あと、恋愛相談者の朔に、日生先生から一言!!』
『って、日生、先生だったの!?』
『後悔だけはすんな!!』
告白して、しかも振られるのをわかってて、すぐにこんなこと言えるなんて…
『俺さ、何でもっと早く言わなかったんだろうって後悔してたんだ。もう少し早く言ってたら、お前を振り向かすチャンスもあったと思うんだ…。でもさ、のこと、応援するな、俺。だからさ、行って来いよ、先輩のとこ。今言わねぇと、いつ言うんだ?それに、もう会えないかもしれねぇんだからよ』
いつも相談して、返ってくる返事は、『後悔しなきゃ、いいんじゃね?』っていつもそんなことだった。日生は、『俺は後悔してきたから』、『だから、には』って。
ずっと言ってきてくれたよね。
もしかしてそれは、自分にも言っていたの?日生。
後悔しないほうがいいのかもしれない。
……そう思ったのは、あたしだけじゃないはずなんだ。
日生もそう思ったはずなんだ…。
あたしも、先輩のこととかを日生に相談してきた。
日生は、何一つ文句も言わずに聞いて、アドバイスまでしてくれていた。
そんな強い日生に負けないためにも、伝えた。
先輩は少し照れたようだった…。……でも、
『ごめんな』って返事が返ってきた。
理由は『彼女がいるから』って。
あたしはその後、ある野原に来ていた。
綺麗な夕日を見ながら…。
落ちゆく夕日とともに、悲しみの想いをのせて、涙を流した。
泣かずにいようかとも思ったけど、こんなにも綺麗な夕日を見ていたら、想いがグッと押し寄せてきた。
そこには、滅多に人が来るところではないけれど、日生がいたことに気づいていたのかわからなかったけど、声を押し殺して泣いた。
あたしはまだ、誰の前でも弱くなることは出来ていなかった。
ただ一人、原っぱで、夕日とともに想いをのせた涙を流すことしか出来ていなかった。
日生に応援してもらったのに…。
なのに、成功させることは…出来なかった。
………人の願いって、どうしたら叶うのでしょう?
「…」
あたしが声を出さずに泣いていたとき、誰かが声をかけてきた。
自分のことに精一杯で、誰の声だかわからなかった。
あたしは、涙を拭いもせず、振り返った。
「日生!?」
声をかけてくれたのは、日生だった。
でも、それから日生は黙ったまま、あたしの隣に座った。
「ごめんね…」
気がつくと、あたしは日生に謝っていた。
日生は、驚いたような顔をしていた。
「ごめん…駄目…だった。」
さっきのことを思い出して、再びなきそうになる。
日生は黙ったままだったけど、微笑んで言ってくれた。
「頑張ったな。」
そういわれて目に涙をためていた。
それを見た日生は、
「泣けばいいじゃん。強いやつでもさ、本当はどっか弱いトコがあるんだから、は…頑張ったよ。強いんだよ」
って言ってくれていた。
あたしは、そういってくれた日生の隣で声を上げて泣いた。
このとき、少しだけど、あたしは日生の前で弱くなれた気がしたんだ……。
あれから3週間。
あたしは転校した。
今は、誰もあたしの事を知らない。
未知の場所。
新しい出会いがある。………はずだった。
「で、何であんたがここにいるわけ?日生」
「何でって、俺も引っ越してきたんだよー!」
「……日生…」
「何ー?」
「馬鹿。」
そう。あの日生光宏はあたしと同じ学校に転校してきた。…らしい。
表では『馬鹿』なんていってるけど、本当は凄く嬉しいんだよ。
…だって、あたしはまだ、日生の前でしか弱くなれていないから。
…それに、新しい恋を見つけたみたいだからさ!