案外、時が経つのなんて早いから
もう夏休みなんだよ!?
中学生日記
一年生、八月
「一馬ー!」
「、よく来れたな。」
「うん!道聞いたらさ、あの人らも行くから、って教えてくれたんだよ。」
「…英士!?結人!?」
「あー、なんだ。一馬の彼女か〜。つまんないのー。」
「違うっての!結人、変なこと言うな!」
「あ、マジでー?俺、若菜結人。よろしくな〜!」
「う、うん。。一馬のクラスでお隣の席。ついでに一緒に学級委員やってる。」
「俺は郭英士。よろしく。」
「!わかったろ?」
「うん、よーくわかった。」
「ってか俺には練二だって居るし、浜松もだし、草薙もさ…。」
「はいはい、もーわかってる。それは毎日のように見てたから。」
「まーな。」
「…ってもしかして一馬、二人だけ?友達って?」
「そうだよ!わりゅいか!」
「うわ、一馬だせぇ!噛んやんのー!」
「うるしゃい!結人!」
「まぁ、一種のバカだよね、二人とも。」
今日は、一馬を見学に来た。
四月に約束した、『友達見せてね』なんて約束も果たしてくれたりした。
正直、あたしはもうそんな事忘れてたし、あたしや練二、亜弓も麗奈もいる。
だから、よかったのにね。
マメな男だわ、ホントに。
「なぁ!ちゃんサッカー好き?」
「うん、好きだけど。」
「一緒にやる?」
「いや、いいよ!いいよ!あたしなんて下手だしさ。」
「いいんじゃない?別に下手でも俺等は怒んないし。」
「そう?じゃあ…やろうかな。」
そしてあたしは、一緒にさせてもらうことになったけど…。
「ねぇ、一馬…」
「何だよ?」
「郭くんも若菜くんも、何気に上手くない?」
「まー、だろーな。」
「どーせ、一馬も上手いんでしょ?いいとこ見せてよ?」
ちょっと一馬をからかってみたくなった。
郭くんも若菜くんも本当に上手くて…でもそれ以上にビックリしたのは一馬の上手さ。
あれはからかう必要もないかな、なんて今更思う。
「ちょっと、一馬!」
「何だよ、さっきから。」
「アンタ学校でるとなんか態度変わるんじゃない?」
「関係ないだろ!」
「うん、そーだね。ってか、一馬上手いね!ビックリした。」
学校の授業でやるサッカーなんて、一馬は普通にボール蹴ってるだけ、って感じだった。
でも、今は違う。
走って、汗流して、息きらして、精一杯やってる。
「なんか、凄いかっこよかったよ!」
「さ、サンキュ…。」
「ははっ、一馬が照れたー!」
「かじゅまー?何ちゃんにかっこいいって言われて照れてんだー?あー!お前まさか!」
「違うっての!結人は黙ってろよ…。」
「ちぇーっ!面白くねぇな、一馬のヤツ。」
「今日はちょっとさんが来てるから張り切ってんじゃない?」
「あ、そうかも!」
「違うだろ!俺はいつもどおりだって。」
一馬はいつもこんな風なのか!
なんてちょっと納得をする。
学校じゃ見せない顔を一馬はする。
一馬はピッチの上で本当の顔をするんだね。
「うわー、日焼けしてるね、みんな。」
「まぁ、毎日これくらい外にいたらな。」
「…毎日いるの!?」
「そりゃー、休んだら体鈍っちゃうんだぜー?」
「え、結人くん休んだことある?」
「んー…よく覚えてないけど、夏休みだったら、大抵は2週間くらい休みがあるかないかじゃないっけ?」
「…大変だね、君らって。」
「まぁ、でもそれを楽しんでんでしょ。いいんじゃない?それで。」
「…そっか。なんかいいなー!楽しそうだね、3人とも。」
「なー、ちゃん知ってるかー?」
「何を?」
「今度さ、チームで花火大会すんだけど、来る?」
「え?いいの?」
「別に誰が誰誘ってもいいんだぜー!むしろ誘って来た方がよさそうだし。」
「そうなの?」
「うん。来ればいいでしょ。暇だったらの話だけど。」
どうしようか、迷ってたりする。
だって、夏休みの思い出作りにはいいんだけど…
一つだけ問題が、あるんだよね、あたし。
「ねぇ、それって…」
「ん?」
「いつやるの?」
「今度の土曜日かなー。」
「何時?」
「7時くらい?」
「晩の?」
「そう。」
「肝試し…」
「あぁ、するする!もちろんじゃん!スゲー楽しいんだぜー?」
「…やめとく。」
「え!?なんでー?」
「あたし怖いの嫌い。ってか、ヤダ。」
「大丈夫だって!一馬がちゃん守ってくれるって!」
「…一馬ヘタレだからなー…。」
「うるさい!」
「所詮かじゅまだし?」
「英士!!」
「ねー、一馬。」
「なんだよ。」
帰り道、英士くんとも結人くんとも別れて、一馬と一緒に歩く黄昏時。
「花火大会。」
「あー…。どうすんだ?。」
「行きたいけど…怖いからなー…」
「いいよ…、俺も一緒に肝試ししてやるから。」
「ヘタレ一馬が?」
「うるさい!それは黙っとけばいいだろ?」
「うーん…でもなー。」
「じゃあ、英士か結人に頼むとか?結人なんかすぐOKだと思うけど…。」
「あ、それはダメ!」
「何で?」
「だって、出会ったばっかなのに迷惑かけちゃ悪いじゃない?」
そう、それに一馬じゃないと、落ち着けないと思うんだよね。
これは一馬には教えてあげないけどね。
「やっぱ行く!」
「いいのか…?」
「うん!一馬、よろしくね?」
「あ、わかった…。土曜日、6時半にんち行くから、準備しとけよ。」
「え?何でウチんちくんの?」
「どうせ一人で行っても場所わかんないだろ。」
「あ、ありがと。」
「俺こっち。じゃあな。」
「うん、土曜日ね!バイバイ。」
こういう時、やっぱり一馬の顔はほてってかわいかったりする。
思わずからかってやりたくなる、そんな感じの顔。
「よ。」
「うん。」
きっちり6時半。
やっぱり一馬はマメ男だ!
「行こうぜ。」
「うん!」
「ねぇ、他に誰か来るのかな?」
「あー、来るんじゃね?練二とかもなんか言ってたし。」
「何で!?」
「結人と練二ってなんか昔会った事あるらしくってさ。言ってた。」
「そうなんだ!?知らなかったー。」
初耳のことを一馬は知ってて、ちょっと悔しい。
夏休み、中盤にさしかかれば学校が恋しくなるころ。
「練二!麗奈もいる!」
「うわ、じゃん?何してんだ?」
「誘われたから来てるの!」
「あ!ちゃん来たんだ?」
「結人くん!久しぶりー。」
そうしてあたしたちの思い出作りは始まった。
「英士くん、火わけてー!」
「あ、うん。いいよ。」
花火は、監督さんが買ってきてくれていたらしくて、打ち上げ花火も色々な種類をした。
「うわ、キレイー。」
「だろー!これさ、このチームの毎年恒例なんだぜー?」
「そうなの?なんかもったいない気がしてくるなー。」
「だろだろ!来年も来ればいいじゃん?」
「うん、そうだねー!」
「!」
「あ、一馬。」
「もうすぐだけど、大丈夫か?」
「えー?何が?」
「肝試し。」
「無理。」
「おい…ダメじゃん、それ。」
「怖いでしょ!」
「大丈夫だって、ここのそんな怖くないって。」
結局そのあと、一馬や結人くん、練二にまで連行されて、強制参加。
怖いの嫌いなんだから、一馬がどうなっても知らないからね。
麗奈は結人くんと参加するみたいで、練二は、英士くんと。
男の子どうしなんて…笑っちゃうよね。
それはそれでかわいそうな気もするんだけど。
「一馬―…。暗い、怖い。」
「なんか、も学校出ると態度変わるな。」
「うるさい!あたしはいいのー!怖いー。」
「わかった…ほら…」
暗くてよくわかんなかったけど、差し出された手はぬくぬくとしてた。
今頃、一馬は顔真っ赤なのかな?
「ぎゃーーっ!!」
「怖いか?これ…木なんだけど。」
「え…嘘。」
ってか、自分もうちょっと可愛らしい叫び方をすればいいのに、何でぎゃーなんだか。
「、目…開けろよ。」
「嫌だ!怖い!」
「今スゲーキレイだから!」
「え…?」
目を開いたあたしの目の前には、動く光。
蛍。
下には池があるらしく、ここは蛍の生息地らしい。
「珍しい…。東京なのに、こんなトコあったんだ…。」
「なんか、ここは毎年こんな感じ。」
気づけば、あたしたちの手はまだ繋がっていた。
今まで、なんか怖くてそれどころじゃなくて、意識しだして…。
「ありがと、一馬。」
「…え?」
「ありがと!一馬ありがとー!!」
「お、おう…。」
肝試しであたしたちはもっと仲良くなった。
それはあたしだけが感じたことかもしれないけど、そんな気がしたんだ。
これから、色んなことがあるとは思うけど。
よろしくね、一馬。