毎日夜9時に電話がかかってくる。
携帯電話から携帯電話へと。
同じ電話番号。
あなたからの・・・でんわ。
テノヒラ
今日もこの時間がやってこようとしている。
午後8時59分。
「・・・・・・。」
携帯電話が・・・鳴る。
RRRRR RRRRR
「・・・もしもし?」
『・・・・・・か?』
「そうよ・・・ねぇ、あなたは・・・誰なの?」
『またな、。』
こう言って切られてしまう。
いつも、いつも・・・。
でも、ストーカーだとは思えない・・・。
相手の事を聞こうとすると・・・切られてしまうけど、違う気がする。
一体・・・誰なんだろう・・・。
「電話?」
「そうなの・・・。どうしていいかわかんないんだよね。」
「せやなぁ・・・。かかってくるん、何時やったっけ?」
「9時・・・。」
「どや?オレが一緒にいたろうか?」
「いや。」
「そんな即答で答えんといてや。・・・あ、そや。」
そう言って手を前に出す。
「・・・何?」
「手ぇ出せや。」
「・・・?うん?」
あたしは両手の手のひらを上に向け、出す。
すると、シゲはあたしの手のひらに何かを置いた。
「・・・?何、これ?」
「何って・・・紙やけど・・・。」
「見ればそんな事くらいわかるわよ。」
「なんや、シゲちゃんからのプレゼントいらへんの?」
「これ、あけていい?」
「・・・えぇよ。」
折りたたまれた紙をゆっくりと開く。
静かな場所にカサカサと音をたてる。
開いた中には英数字が並んでいた。
「・・・これ・・・。」
「ちゃんとせぇや?ほなな!」
シゲはそういって出て行った。
教室に残されたあたし。
一人きりで見る夕陽。
・・・これは何?
クラスメイトとしての優しさだったの・・・?
それとも・・・
今日も時間はやってくる。
9時・・・。
「もしもし?」
電話に出た。
『・・・?』
「誰・・・?ねぇ、もうそろそろ教えて?」
『ごめんな、。もうかけることはできない。』
「ねぇ、誰なの?教えてよ・・・。」
『ごめんな、。いつかまた会えるといいな・・・。お前は・・・母さんの若かった頃に・・・よく似てる。やっぱり、親子なんだな・・・。やっぱりとオレも・・・。』
「お・・・父さん?」
『・・・お前が産まれてからずっと・・・ずっと愛してた。お前も、母さんも。・・・。』
「お父さん・・・。」
切れた。
虚しさ、寂しさ、悲しみ・・・。
あたしにはこれだけしか残ったわけじゃない。
あたしは・・・お父さんの優しさを・・・愛情を知った。
きっと、これで・・・。
『はいよ、シゲちゃんでっせ。どちらはん?』
「シゲ・・・?」
『なんや、かいな。どないしたん?』
「ありがとう、シゲ。」
『な、なんや?何でそんな事言うねん?』
「お父さんだってわかったの、シゲのおかげだと思うから・・・。だから、ありがとう。」
『・・・お前のとこのおとんて・・・。』
「死んでるよ・・・あたしが生まれたばっかりの頃に事故で・・・ね。」
『・・・そか。』
「あ、そうだ!シゲ・・・。」
『なんや?』
「また・・・明日も電話して・・・いい?」
『・・・えぇよ。』
ありがとう、って言ったら、おう、って。
シゲがくれた紙のこと・・・お父さんは見てたのかな?
だから、もう電話がかけれない、って言ったのかな?
いくら考えてもわかんない。
だから・・・明日の電話で一緒に考えていこう。