太陽が照りつけるグラウンド。
暑く暑くサンサンと照りつける。
眺めていては、あいつが右から左へ。
左から右へと走り抜けていく。
あたしの悩みなんて知りもしないで・・・。
あたしは、あんたが好きなんだよ?
あんた、気付いてないでしょ?
・・・だって、凄く楽しそうな顔・・・してるから。
太陽の下
「―?何してんのよ。」
「・・・。べ、別に何もしてないよ・・・。」
教室の窓側。
あたしの特等席。
放課後に見下ろすグラウンド。
「嘘ばっか!どーせヘーマの事、見てたんでしょ?わかってるんだから。」
「ち、違うよ!」
違わないけど・・・。
あの人を見てた、なんていうのは恥ずかしい。
ましてや、横山平馬の幼なじみなんだから。
あたしが見てた横山平馬は、サッカーが大好きなクラスメイト。
あたしが好きなのは、サッカーじゃなくって、横山。
じゃなきゃ毎日放課後のグラウンドを見下ろしたりはしない。
と言っても、横山がいるのは珍しい事なんだけど。
「今日、平馬と一緒に帰る予定なんだけど、も一緒に帰ろ?」
「え?い、いいの!?」
「もちろん、当たり前じゃん?」
・・・は、横山と幼なじみの関係にある。
初めはにも横山の事は言ってなかったんだけど、一緒にいるうちにバレた。
「よぉ、。。」
横山が教室にやってきた。
気付いてみるともう外は薄暗くなってきていた。
あれからとの話に華を咲かせていた。
「ヘーマ!もう終わったの?」
「うん。帰ろうぜー・・・。」
「もう、自分が待たせてたくせに。」
あたしは、がうらやましいよ。
みたいに横山とは喋れない。
「あ、ごめーん!」
帰ろうとして、校門を出たころだった。
「あたし、今日ゆみちゃんの家にマンガ借りに行くんだった!ごめん、先帰ってて。」
「はいよ。」
「ヘーマ、をよろしくねー。」
「・・・はいよ。」
・・・今日ゆみちゃんの家に行くなんて、一言も言ってなかったじゃない。
気をつかうな、っての。
「んじゃ・・・、帰る?」
「あ、うん。そだね。」
緊張しますよ、そりゃあね。
だって・・・好きな人と帰るんだもん。
「あ、さぁ・・・からオレの事何か聞いてる?」
「え・・・?ううん、特には・・・。」
「そっかー。ならよかった。」
話す事って少ない。
横山って意外と無口なんだよね。
何、話そう?
「さぁ、今日見てただろ?」
「え!?な、何を?」
「オレがサッカーしてんの。」
「あ、うん。」
「どーだった?かっこよかった?」
「か、かっこよかったよ。」
「マジ・・・?」
「うん・・・。」
そう言ったら横山はニコニコしだして、ちょっと・・・ね。
おもしろいから、あたしも笑ってやった。
「ってさ、好きなヤツとか・・・いたりする?」
「え・・・え!?」
「いる?」
「い、いるよ・・・。」
「あ、そーなんだ。誰?」
「誰って・・・えと・・・。」
こんな事・・・聞かないでよね。
目の前にいるのに、アンタが好きだ、なんていえないよ。
「オレもねー・・・好きなヤツ、いるんだ。」
「そ、そうなんだ?」
「誰だと思う?」
「そんな事聞かれても・・・。」
「当ててみ?ヒントはー・・・オレと同じクラスのヤツ。」
「同じクラス?」
・・・うちのクラスにはかわいい子がたくさんいる。
学年でもかわいいよね、って言われてる子が何人も。
「あ!とか・・・。」
「バーカ!は違うって。アイツはただの幼なじみ。」
「えー・・・じゃあ・・・。」
「第2のヒントは・・・あ、でもコレ言うとすぐにわかっちゃうからなー・・・。」
知りたいよ、横山の好きな人。
例えそれが、あたしじゃなくても・・・心から応援してあげたいから。
・・・そうなれるまできっと時間はかかるけど、待っててね。
「んー・・・と仲がいい。」
「と仲がよくて、うちのクラス・・・なんてたくさんいるよー。」
「そー?じゃあ、次のヒントね。」
「あ・・・。」
家の前。
「・・・これが最後のヒントな。コレだけ当てて帰ってな。」
「わかった。」
「これでわかんなかったら、はバカってことで。」
いいよ、バカでも何でも。
横山ともっと近づくことが出来たら・・・。
「最後のヒントは、今オレがいる目の前の家の子。」
「・・・え?」
「わかったよな?じゃ、また明日な。」
「よ、横山!」
「・・・何?」
「ホントにあたしなの?」
ここはあたしの、家の前・・・。
本当にあたしが好きなの?
「ホントだよ。」
「何で・・・?」
「何で、って。なんかって子供みたいだなー・・・。」
「どうせ子供だもん。」
「何で、っていうのは聞いちゃダメなんだって。好きなモンは好き。それじゃダメ?」
「・・・ううん。」
「あ、はさー・・・誰が好きなの?」
「よ・・・横山だよ。」
「マジ?」
「うん。」
「よかった。」
落ち着いてる・・・。
っていうより、なんか・・・無頓着?
「じゃ、また明日ね。」
「・・・うん。」
「今日さー、電話してもいい?」
「・・・電話?」
「うん。」
「あ、いいよ。」
「じゃ、またあとでね。」
それだけ言って横山は背を向けて帰って行った。
横山の家からは少し離れたあたしの家まであたしを送って・・・。
いつもはもっと近ければいいのに、って思ってたあたしの家だったんだけどな。
・・・何でもっと遠い家じゃないんだろう。
そうしたら、もっと・・・横山と一緒にいられるのに。
・・・どうしようもなくなった。
横山の背中が見えなる、あの角まで見送って、そしたら家の中に入ろう。
角を曲がる前、少し後ろに振り返って、横山が笑った気がした。
幻覚だったらどうしよう、夢だったらどうしよう・・・。
そんな事ばっかり考えてる。
だから・・・
「も、もしもし?・・・?」
『?どーだった?』
「もう、わけわかんないよ・・・ねぇ、?これ、夢なのかな・・・?」
『は?、何言ってんのよ。さては・・・ヘーマに告られたかー?』
「うん・・・。」
『マジで!?よかったね、。』
「ありがと・・・。でも、ホントに夢じゃない?」
『夢じゃないって・・・。それにしても、ヘーマもがんばったなー。』
「・・・知ってたの?」
『まぁね。あ、そろそろあたしも忙しいからさ、また電話しよ。じゃーね。』
「ちょ、ちょっと待ってよ、ー・・・。」
に聞いてもやっぱり信じられなくて、とりあえず頬をつねってみた。
痛い・・・。
「ただいまー・・・。」
「あ!ねーちゃん、お帰り。」
「優・・・。あんた、ちょっとこっちおいで。」
「なんだよー・・・。ね、ねーちゃん!いひゃいって!」
優の頬も痛いみたいで・・・なんとなく現実だと思えた。
いまさらだけど。
そしたら、電話がなった。
『もしもしー?ー?』
「・・・・・・。」
『おーい、ー?』
「あ、ご、ゴメン・・・。」
『ビックリした。何にも喋んないんだもん。』
「ゴメン・・・。」
『さー、明日の朝暇?』
「明日、って・・・水曜日だよね?」
『そだよ。』
「暇、だよ。」
『じゃーさ、明日は一緒に学校行こ?』
「う、うん。」
『明日さ、オレ練習あるから一緒に帰れねぇんだ。だから、いい?』
「・・・いいよ。」
『よかった、じゃ、また明日な。』
「うん・・・。」
電話が切れたのを確認した優が横から喋ってくる。
「何?ねーちゃん、彼氏でも出来たの?」
「うるさいっ!」
優を黙らせて自分の部屋に入った。
頭がわけわかんない事になってる。
「おはよ、。」
「・・・おはよ。」
朝学校に行こうとすると、メールが来ていた。
『オレ、の家の前にいるから。』
だって。
なんか、ストーカーみたいだよね。
「じゃ、行く?」
「うん・・・。」
「ん。」
「え・・・?」
「早く。ん。」
「あ、うん。」
手を出した。
手をつないだ。
朝日がまぶしい。
「よっしゃ。」
ぎゅっと手をにぎってくれた・・・。
横を見ると昨日みたいにニコニコしてる横山がいて、その顔に微笑んだ。
太陽がサンサンと照る下で走り出した。
朝から、走るなんて元気なヤツ。
引っ張られてあたしも着いていく。
これでもう、悩みが一つ消えたんだよね?
また、これからも増えるかもしれないけど・・・。
今はそんな事考えないよ。
太陽の下を・・・一歩一歩強く踏みしめ、走った。
新たな一日を始めるための朝を・・・。