出会ったあの頃は、今より少し髪が長かったね。

なつかしい、あの笑顔。

あの声。

あの手の温もり。

指きりした約束。

この学校、そしてあなたから――――――卒業




旅立ちの日に




・・・。」

「亮!卒業おめでとう。」

「あぁ。」

今日は、あたしたちの中学校の卒業式。

彼氏の亮と一緒に教室にいる。

卒業式が終わった教室の中。

みんなもいる中で・・・最後の話になるかもしれないね。

、高校決まったのか?」

「んーん。明日が合格発表だよ。」

「そうか。」

「亮は、そのまま高等部行くんだよね?」

「あぁ。」

「そっか・・・。」

あたしたちはこれからバラバラの道に行く。

あたしはこの武蔵森中学から進学校の高校へ。

亮は武蔵森の中等部から高等部へと進学する。

多分・・・もう会う事はないかもしれない。

武蔵森は寮だし、あたしもこれからまた高校の寮へと入る。

会えない・・・。

さみしい想いをする事の方が多いかもしれないね。

あたしは・・・亮に新しい恋をもっと見つけてほしいって思うよ。

「亮・・・今までありがとうね。」

「・・・あぁ。」

「あたし、頑張るよ。ちゃんと弁護士になるから、ね。」

「あぁ。」

「だから、亮も頑張ってね?絶対に有名になって。」

「あぁ。」

「ふふっ、亮、さっきから『あぁ』しか言ってないよ。」

「・・・そうか?」

「そうだよ。」

「ねぇ、亮?」

「ん?」

「あたしさ、有名になったら昔亮とは同じ中学で付き合ってたんだ、って言えるくらいに有名な弁護士になる。それで、いつかは何かの番組であたしと亮の対談みたいな事が出来たらいいな。」

「・・・そうだな。」

「約束、しよ?いつかそうなるようにお互い努力して、有名になろ?」

「そうだな。」

「約束だよ。」

あたしたちは小指をつないだ。

目に少し涙をためて。

「指きりげんまん うそついたら はりせんぼんのーます 指きった」

あたしたちの小指は離れていく。

同時にあたしたちの声も。

「また、ね。亮。」

「あぁ。」

「ねぇ、最後に写真撮ってもいい?」

「あぁ。」

友達に写真を撮ってもらう。

ピースサインを亮との間にする。

亮はいつもどおりに少しムスッとした表情。

これが最後の写真になるかもしれない。

大切に持っておきたい。

大切に・・・。

大人になってもこれが思い出だ、って思えるように。

「ありがとう、亮。」

「あぁ。」

「それじゃあ・・・あたし行くね。」

「あぁ。」

「亮、頑張ってね。」

「お前もな。」

「じゃあ、またいつかね。」

「あぁ。」

背をむけた。

寂しさ・・・悲しさ・・・痛み・・・

あたしは、あなたが大好きでした。

でももう・・・一緒にいられないんだ。

ありがとう、亮。

今までずっとケンカした時もあったけど、あたしは・・・幸せでした。

本当にありがとう。

あたしは・・・歩きだした。

隣にはいない亮の姿を思い浮かべながら・・・。