誰かに恋心が芽生えた時って、嫌な予感を感じるんだ。

彼女がいた・・・

あなたには、大切な・・・大切な彼女が。

大好きなあなたに・・・逢いたい。

あなたを好きになっちゃいけないのに・・・。




セツナイ コイゴコロ




「何なにー?誰かカッコイイ人いる?」

中学の文化祭のときの会話がコレ。

アンタらまだ中学生でしょ、なんて思っちゃう。

・・・あたしも中学生だけど。

「ねぇ、。カッコイイ人探しに行こうよー。ねぇ?」

うちの中学では、文化祭が日曜日にあって、その時は色んな学校からや高校生なんかも文化祭を見にきたりする。

よって、さっきみたいな会話が発せられる、というわけであります。

「いいよ、あたしは。」

「そんな事いわずに行こうよ!ほら。」

強引・・・。

結局外に連れ出された。

文化祭なんて、正直興味なかった。

・・・あなたに逢うまでは。




「あ!ねぇねぇ、あの2人って、武蔵森・・・の制服だよね?」

「そうなんじゃない?」

「声かけに行こう!」

「ちょ、ちょっと!!」

そのままに手を引っ張られて走り出した。

「こんにちはー、武蔵森の方ですよねー?」

よくこんな事聞けるなぁ・・・。

あたしは、別に・・・今好きな人がいるわけでもないし、彼氏がいるわけでもない。

だけど、あんまり・・・恋したい気分じゃないんだけどなぁ・・・。

「何?ここの学校のコ?」

「そうでーす。」

「そーなんだ。」






って、どうしてこういう展開になるかなぁ・・・。

今あたしたちは、ベンチに座って仲良く話しなんかしてる。

・・・仲いいのはだけだけど。

「・・・ちゃん、だっけ?」

「・・・そーですけど・・・。」

「俺、笠井竹巳。よろしく。」

「・・・ども。」

こんな返事したらが横から口を出してきて、無愛想な返事するな、だとか、ゴチャゴチャうるさい。

は男の事になると、うるさいんだ。

「いいよいいよ、気にしないで。」

こういう男って信用できない。

・・・女目当て?なんて思っちゃうし。

こんな簡単に誰もが信用してたら今頃世の中どうなってることやら。

「あ、俺ちゃんとさー、中まわってくるから!また、あとで電話するな!」

「ちょ、誠二!・・・って・・・。」

「いいの?追っかけたら追いつくのに。」

「・・・ちゃん残して追いかけられないよ。」

およよ?

ちょっと、グラっときちゃうじゃん。

にしても、サラっというね、この人。

「笠井くんさ・・・」

「何?」

「さっきの・・・藤代くん?とは、仲いいの?」

「うん、仲いいよ。部活が一緒だしね。」

「そーなんだ。何部?」

「サッカー部。」

「武蔵森のサッカー部なんて、めちゃくちゃ名門じゃん。じゃあ、強いんだね。」

「俺はそうでもないけど、誠二は強いよ。」

「へぇ・・・。」

わりと笠井くんの事は気に入った。

自分でも意外だったけど、なっちゃったものは仕方がないよね。

・・・でも、気になる事が一つだけあった。

ねぇ、その首からネックレスにしてぶらさげてる指輪・・・

どういう意味があるの?





「結構長い事いたね。」

「うん、そーだね。」

あれからずっとあたしたちは座って話をして・・・そのまま。

「どーするの?藤代くんと連絡とれる?」

「うん、大丈夫だよ。」

そういって笠井くんは、携帯電話を取り出した。

・・・待ちうけのその女の人はきっと、アイドルとか、好きな歌手だとかじゃなくて・・・。

彼女?

「もしもし?誠二?今どこいる?」

笠井くんが電話してる間、気が気じゃなくて・・・。

いまさら気付いたけど、あたし・・・きっと・・・話してる間に笠井くんの事、好きになっちゃったんだと思う。

・・・笠井くんには、大切な・・・彼女がいるのに、ね。

「ごめんね、ちゃん。」

「ううん、どっかで待ち合わせするんでしょ?」

「うん。」

「じゃ、そこまで一緒に行こうかな・・・。」

重い腰を持ち上げて・・・歩き出す。

並んで歩くのも、笠井くんと喋るのも・・・何もかも、あなたに逢うことも・・・全てが最後。

きっと、もうないんだよ、この時は。

一生こない。

だって、・・・あなたには・・・

「彼女いるんでしょ?」

「・・・うん、気付いてた?」

「指輪と、携帯の待ちうけちらっと見えたから。」

「ごめんね、言わなくて。」

「言う必要なんてないじゃん、どうせ今日で最後だと思うし。」

「・・・そっか。」

「彼女に怒られないようにしなよ?」

「大丈夫だよ。」

きっと、笠井くんが『大丈夫』って言ってられう間は安心していられるみたいだね。

・・・あたしにとっては、嬉しい事でもなんでもないけど。

「じゃあね、笠井くん。」

「今日はありがとうね。」

「こちらこそ・・・。彼女、大切にしてあげなよ?」

「うん。」

「・・・じゃ、じゃあね・・・。」

「うん。」

背を向けた、あたしの負け。

だって『好き』になっちゃったんだもん。

仕方ないじゃん。

・・・それでも笠井くんには大切な、大切な彼女がいるんだもん。

どうにもできないよ。

あたしには、泣く事しか・・・。

そして、新たな恋を探すだけ。

でも、今日だけでいいから・・・あなたを好きでいさせて。

あなたを好きでいた余韻に浸らせて・・・。

明日からは、また笑顔になるよ。

『大丈夫』っていえるように。