僕の大好きな幼馴染は、かなり鈍感で、天然。
いつになったら、僕の気持ちに気づいてくれるんやろうか?
正当な幼馴染のあり方。
「ノリック!」
「お、やん。どーしたん?」
「どーもせぇへんよ。姿が見えたさかい、呼んだだけやねん。」
「さよかー。」
「うん!」
いつもテンションが高ぅて、いつも僕に笑って話しかけてくれるのが、幼馴染の。
僕は…のこと好きやねんけど、きっと、は僕の気持ちに気づいてへん。
せやけど、気づいて欲しいねん。
僕には告白する勇気なんてあらへんけど…。
「って鈍いなー。」
「何やねんっ!そんなことあらへんわー。」
「めっさ天然やな。」
「せやから、そんなことあらへんって。」
まぁ、気づかへんのも無理はないわな。
そこがかわえぇ、ってのもあんねんけど。
「あ、もう次移動やから行くな!ほなな〜!」
「おう!」
かわえぇねんな、は。
この前までは、僕…のこと幼馴染やからって、何でも知っとると思ってた。
せやけど、それは僕だけやった。
今はもう、全然わからへん。
それでもかて、僕のことも知らんのやと、思う。
「ノリック〜!」
「!?」
「やっほー!」
は校舎から大きく手を振って、僕を呼んでくれた。
僕は、に『ノリック』って呼ばれるん、大好きやねん。
そうやって、笑って手を振ってくれたに、僕も笑って答えた。
いつでも笑って、明るくて、天然で、鈍感のに…
僕の気持ちを知ってもらうには、告白しかあらへんのかな?
『告白しかあらへんのんかな?』
僕は藤村に相談してみた。
藤村なら…えぇアドバイスしてくれるんやないか、思うて。
「どうやろなー?俺やったら、告白するかもわかれへんな。いつ、ちゃんに好きな子とか彼氏が出来るかわからへんのやで?」
「…せやな…。」
伝えたくても、伝えられへんのが、今の状況や。
もし僕が失恋したら、立ち直れへん。
今のとの関係が崩れてしまう。
僕が普通におれへんなってしまうわ。
気まずくなんねん、きっと。
そうなってしもうたら、僕はに笑えへん。
話もろくに出来へんようになるかもしれん。
僕は、どうすればえぇんやろうか、今日一日ずっと考えさせられていた。
次の日、答えをまとめられたか、言うたらまったく、さっぱりや。
同じことをエンドレスで繰り返してしまう。
考えれば考えるだけ思うことは悪い方向へ行ってしもうた。
せやから、もう一度…藤村に相談。
「どうしたらえぇんやろか?」
「俺は、ノリックが後悔せずにすんだんやったら、それでえぇと思うねんけど。」
「僕が後悔せぇへんように…?」
「せや。俺はそう思うんやけど。」
「伝えるべきなんやろか…。」
「早い方がえぇって。この前も言うたけどな。早ぉせんと、ちゃんと会うた時に俺が惚れてしまうかもしれへんで?」
藤村のアホ。
そんな冗談言うなや。
「決めた!僕、告白する!」
「おぉ。」
「おおきにな、藤村。」
「えぇよ。気張りーや。」
僕は走った。
練習も終わっていつもは残って自主練してんねんけど、今日だけは…。
今日だけは一目散に逃げるようにして帰ってきてん。
大好きなのために。
鈍感で、天然で、アホで…でも明るくて、いつも笑顔で、やさしい、可愛いに。
ピンポーン
普段は使わへん呼び鈴を押し、返事を待った。
『はい?』
「あ、僕…。吉田光徳ですけど、ちゃんおりますか?」
『あー、なら、出かけておらへんよ。』
「そうですか。せやったら、また来ます。」
『すんませんなー。』
インターホンがプツッって切れたんと同時に安堵と笑がこみ上げてきた。
「ははっ…おらへんかったんやな。」
気が抜けんねん。
あかん、気合入れんと!
今日は伝えられるやろか?
朝や。
今は、ん家の前に来てる。
里奈に思いを伝えるために。
せやけど、なかなか出てけぇへん。
ドアの開く音がした。
「あ…」
「お、光徳くんやないか。」
「おはようございます。」
「久しぶりやな。」
「お久しぶりです。あの、…もう学校行きましたか?」
「お、?は、今日は風邪で学校休む言うとったで。」
「そうやったんですか。」
「おー、気をつけてな。」
「あ、はい。」
また出来へんかった。
帰りがけに寄ってみようかて思う。
今日は晴天やな。
、大丈夫やろか?
風邪、早ぉ治るとえぇねんけど…。
ピンポーン
何か昨日と似たパターンやな。
『はい?』
「あ、僕…。吉田光徳ですけど、ちゃんおりますか?」
『おるで。どうぞ、上がり。』
「あ、おおきに!」
ガチャ、とん家のドアを開けた。
おじゃまします、と小さめの声で言ってから、靴を脱いだ。
もうすぐ、に会えるんやな。
「あ、本当にノリック来た。」
「、風邪引いてんねんやろ?大丈夫なん?」
「大丈夫やで!復活や…」
…まだ大丈夫やないんちゃうんか?
ちょい、フラフラしてるんとちゃう?
風邪、ホンマはまだ治ってへんのやろ?
大丈夫やないやろうなー。
「、これプリントや。」
「あ、おおきに〜」
の部屋に入って、をベッドに寝かす。
「僕な…」
「ん?どしたん?」
緊張、や。
試合でもこんな緊張することなんかあらへん。
あったとしたら、デビュー戦ぐらいやろか。
「あんな…」
は首をかしげてこっちを見ている。
これから何を言われるかなんて、まったくわかってへんみたいや。
大丈夫やろか?
頑張れ、僕!
「僕、のこと好きやねん。」
「え…?」
ついに、言えた。
やっと、言えた。
ずっと言えへんかったから、よかったわ、ホンマ。
「本当?嘘やない?」
「嘘やない。ホンマや。」
「あ、あたしもな…ノリックに言わなあかんことあんねん。」
「何や…?」
あんなこと言うたあとやから、返事のことやと思うねんけど…。
「あたしも、ノリックのこと好きやねんで?」
「嘘や!?」
「ホンマやって。」
「ホンマにホンマなんか!?」
「信じてくれへんの?」
「いや…ビックリしすぎてん…。」
「好きや、ノリック。」
このときのはやけに大人びて見えた…。
ありがとう、。
幼馴染なんて、知らんことばっかりやねんな。
も鈍い。
でも、僕も。
僕も、めっちゃ鈍かったようや…。
の言ってくれたこと、嬉しかった。
ホンマに嬉しかったんや。
好きや、好きや、大好きや。
「好きやで、。」
いくらでも言うたるわ!
僕の大好きなのために。