あたしの毎日の楽しみ・・・前は、そんなものなかった・・・。

けど、今は部活がある!

飛葉中サッカー部として、マネージャーの仕事も、一緒にサッカーをするのも、あたしは大好き!

本当は、幼馴染の柾輝の傍にいたくて入ったサッカー部だったけど、今は、サッカー部に入って、本当によかったと思ってる。

幼馴染の柾輝とは、物心ついたころからいつも一緒だった。

でも最近は、翼先輩に柾輝に好きな人が出来たって聞いた。

だから、あたしが傍にいると、邪魔なんだよね・・・?

そう思ったから、あたしは柾輝を避けてる。

そのほうが、柾輝もいいよね・・・?





サッカー日和





・・・・・・晴れてる。

もうすぐ冬ということで寒かった毎日が、少しだけ夏に戻った気分だ。

思いっきり、寒さも忘れてサッカー出来るようなサッカー日和・・・なーのーに!!何であたしはこんな日に風邪ひくかなぁ・・・?

バカは風邪ひかないっていうのになぁ・・・。

しかも、熱っぽいし・・・。

でも、もう放課後だから大丈夫だよね?

「ねぇ、。あんた風邪ひいてるでしょ?」

「ほぇ?」

何で翼先輩が・・・?

あたし、学校で風邪ひいたなんて言ってないし、それに、友達も先生も誰も気づいてはくれなかった。

なのに・・・どうして?

「風邪ひいてるでしょ?」

「ぁ、一応・・・ってか、多分。」

「やっぱり?」

「でも、なんでわかったんですか?」

「顔」

翼先輩は、短くきっぱりと言う。

「顔、赤いんだって。」

あたし、そんなに顔・・・赤いのかなぁ?

「そんなことないですよ・・・?」

「あるって。、やっぱ熱あるよ・・・?」

翼先輩は、あたしの額に手をあてて、自分の額の温度と比べた。

「ないですって。」

「あるよ。休んどけよ、今日は。」

「でも、今日こんなに晴れててサッカー日和なんですよ?折角暖かいんですから、サッカーしたいじゃないですか!」

「何言ってんの、。熱高いんだし、休んどけって折角言ってやってんだよ。倒れたりしたら、誰が運ぶと思ってんの?ココにいる僕等ってことになるの。わかってる?わかってないでしょ。たとえ、倒れなかったとしても、明日は試合なわけ。今日より明日の方が休まれたら困るの。わかった?だから、今日休んで、明日ちゃんと来なよ?・・・?今日は休んでよ?」

「は、はい」

翼先輩にココまで言われて、抵抗できるわけがない。

それに、翼先輩って、怒ったら凄い怖いんだもん・・・。

「ほら、さっさと帰って寝な。」

「は〜い。」

あたしは、大人しく帰ることにした。

「ほら、帰るよ。」

でも、そういって翼先輩はあたしの手を引っ張って行く。

「マサキ、あと宜しくな。」

翼先輩は、さっさと歩いて行く。

柾輝は、『お、おう』と言った。

何だ・・・。とめてくれたりは・・・しないんだ、柾輝。

・・・・・なんなの?何で・・・こんなにムカついてるんだろう?

「ちょっと・・・翼先輩!引っ張らないでください!」

部活中ということもあってか、グラウンドには、沢山の人がいた。

みんながあたしの声に反応してる。

それに、すごい視線。

流石は、飛葉中の人気者・・・だ。



「翼先輩!いい加減離してくださいよ」

「そんな怒ってると熱上がるよ?」

「そうかもしれませんけど、翼先輩が怒らしてんですよ?」

「でも、怒ってんのはなんだよ?」

「そうですけど・・・ゲホッ」

「大丈夫?」

「大丈夫・・・です。ゲッホ、ゲホッ」

「言わんこっちゃないね。」

そう言って翼先輩は遠くを見据えた。

まるで、何かを睨むかのように・・・。

「ゲッホ、ゲホ。ゲホゲホ・・・ハァ・・・ハァ」

「本当に大丈夫なわけ?明日とかさ。ってか、熱上がってるし。」

「すいまゲッホ・・・せん」

「ほら、早く帰ったほうが「!」

「ま、柾輝・・・?」

「悪ぃ、翼。コイツ、翼には任せられねぇから。」

「いきなり来てからそんなこと言うんだ?ふーん。僕に任せられない・・・ね。」

「あぁ。」

「柾・・・ゲッホ、ゲホッ、ゲッホ」

柾輝が、こんな風に言うの、初めて見たかもしれない・・・。

咳が止まらなくなって、どうしようもできない。

二人の間に入って言い争いを留めることも…。

「それは、何でな訳?僕の気持ち知ってて、黙ってを連れて行くってことは、ないよね?まぁ、しようとしても僕が許さないけどね。ねぇ、柾輝?」

「翼も、知ってんだろ?」

この二人の会話に、あたしはついてけない。

「でも、は知らないよね?」

翼先輩は、こんなこと言ったら怒られるけど、少し不気味な笑みを浮かべてる。

そうして、あたしを見た後に、柾輝を見る。

「あぁ、確かにそうだな。」

「だろ?」

二人して、何故かニッと笑う。

でも、次の瞬間、柾輝は、キリッとした表情をして、あたしを見た。

・・・俺がお前と翼の後、追っかけて来た理由・・・わかるか?」

あたしは、柾輝の顔を見るのが、何となくだけど、怖かった・・・。

それで、あたしは、首を横に振った。

「だろうな・・・。」

「マサキ、さっさと言いなよ。」

「あぁ、わかったよ。・・・・・・・・・俺は・・・が好きなんだよ。」

柾輝の言葉・・・。

『俺はが好きなんだよ。』って言葉が頭の中で何度も繰り返される。

ぁ、あたし、何か言わなくちゃ・・・いけない?

考えれば考えるほど何を言えばいいか、わからなくなる。

・・・答えなよ。」

「ぇ・・・」

正直、どうすればいいか、わからない・・・。

「ぁ、。補足ね。先に言っとくけど、を迷わす為じゃないからね?僕もさ、のことが好きなんだよね。」

あたしは、驚く。

柾輝の方をチラッと見てみると、驚いてはいなかった。

・・・!今わかった。

さっき言ってたのは、このことだったんだ・・・。

「ねぇ、。僕にしといた方がいいんじゃない?」

翼先輩は、押しが強い。

柾輝は、何も言わずに返事を・・・待ってる?

でも・・・顔が引きつってる。

どういう・・・こと・・・?

、もう一回言「言わなくていいぜ?」

柾輝の言葉が翼先輩の言葉を遮る。

「俺がを貰うから。絶対に。」

柾輝の顔が引きつってたのは、翼先輩の言葉の所為・・・?

「じゃぁな、翼。部活に戻っとけよ。コイツは俺がちゃんとすっから。」

「ま、柾輝・・・?」

いつにもまして熱が高い気がする。

きっと、顔も真っ赤のはず・・・。

ちょっとだけ、熱があってよかったとか思っちゃった・・・。



暫くして、あたしの家に着いた。

家に着くまで、柾輝は、喋らなかった。

勿論、あたしも・・・。

「家に、誰か居んのか?」

「多分・・・いない。と思う。」

「そうか。だったら、鍵持ってっか?」

「へ?あ、うん」

柾輝がウチに来るのは、凄く久しぶり・・・。

せきは大分止まったから、楽なんだけど、相変わらずダルい・・・。

「上がるぜ?」

柾輝に鍵を渡してから、待っていると、勝手に鍵を開けて、ズカズカと家の中に入って行く。

柾輝って、こんなんだったっけ?

・・・・・・・ぁ、そっか。

あたしが見ないうちに変わったんだ・・・よね?

「おい、。お前早く寝ねぇと、翼に怒られっぜ?」

「ぁ・・・うん・・・。」

明日までに治るかな?風邪・・・。

「早く寝ろよ。」

柾輝の言葉は、少しキツくて、どこか普通の子が求めているものとは違うのかもしれない・・・。

でも、何となくだけど、あたたかい・・・。

いつも人のことを考えていてくれる・・・。



布団の中にもぐって、目を閉じてみた。

柾輝の顔が頭に浮かぶ。

ガチャ

ドアの開く音がした。

布団から少し顔を出して入ってきた人を見ようとする・・・。

やっぱり柾輝だった。

柾輝は部屋に入ってきて、あたしが寝ているすぐ横に座った。

「ゴメンな、俺が連れてきて・・・」

柾輝は、何で謝るんだろう・・・?

「起きてんだろ?顔出せば?」

バレてました・・・。

寝たふりしてたつもりだったんだけどなぁ・・・。

抵抗はやめようと思って、正直に顔を出した。

「ゴメンな、。」

さっきから謝ってばかりの柾輝。

「なんで・・・謝るの・・・?」

「さっき、俺、を貰うって翼に言ったじゃねぇか。本当は、は嫌がってんじゃねぇのかって思ったから・・・さ。」

それが、柾輝の謝る理由・・・?

何か、笑えて来るよ・・・。

「・・・プッ・・・」

「は・・・?」

「だって、おかし・・・ゲッホ、ゲホッ」

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫。」

「そうか・・・よかった。」

「でもねぇ、柾輝・・・」

「なんだ・・・?」

「教えてあげよう・・・?」

言っていいのか、わかんないけど、言っちゃって・・・いいよね?

ごめんなさい、翼先輩。

「あたしも、柾輝が好き。」

「は・・・?」

「信じてくれないわけ・・・?」

「いや、違うけどよ・・・」

「まぁ、いっか!」

「あぁ。」

すると、にぃって、柾輝が笑った。

聞こえないかもしれない・・・。

聞こえなかったかもしれない・・・。

「うれしかったよ」

でも、静かな部屋には言葉が響き渡る。

柾輝には、どうなんだろう?

「俺もだから・・・」

柾輝にも聞こえていたみたいだった。



「ねぇ、柾輝。」

「ん?」

「もう、帰ったら・・・?」

「はぁ?」

「勿論、嫌いとかじゃないよ?ってか、好きだ・・・し・・・。柾輝に、風邪うつしたくないの・・・。あたし。それに、明日って、試合じゃん?」

「いいって。俺は、お前みてぇに風邪ひかねぇから。」

「うっわー・・・」

「でも、お前の風邪なら、うつっても、いいから・・・」

柾輝の言葉で嬉しさがます。

「ねぇ、柾輝?」

「ん?」

「大好き!!」

柾輝の顔、さっきは言わなかったけどさ、滅茶苦茶真っ赤なんだよ?

なんか、柾輝って案外面白いね。

あたしはさ、そんな柾輝が・・・

「大好きだよ!」

柾輝の言葉が嬉しすぎて。

何度でも言ってしまえそうな・・・。

ずっと、ずっと、ずーっと、大好きだよ、柾輝。



その後、柾輝は夜まで一緒に居てくれた。

おかげで、あたしも風邪が治ったし♪

ありがと、柾輝!大好きだよ!





でも―――――――







試合の日に、風邪をひいてキツそうだったのは、柾輝だった。