もうすぐですね、誕生日。
今年も貴方の誕生日、祝っちゃってもいいですか?
ろうそくを消しながら
「真田一馬くん!いらっしゃるかしらー?」
「・・・なんだよ、。選抜の練習まで見に来たのかよ?」
「まぁね。」
「なーなー、一馬。この子誰?」
「何?一馬くんのお友達?じゃあ、初めまして。です!」
「ちゃん?俺は、一馬の友達で若菜結人。」
「郭英士ね。」
「一馬くんがいっつもお世話になってまーす。」
「こちらこそ、だね。」
ちょっと偉そうな郭君が答えた。
若菜結人くんと、郭英士くん。
一馬くんには沢山友達がいるなぁ、と思う。
「なぁ、ちゃんって一馬の何?」
「え?一馬君の・・・彼女?」
「マジ!?一馬、お前いつの間に!!」
「煩い、結人!向こう行ってろ。英士も向こう行っててくれ。」
「ちぇー・・・」
「はいはい。」
渋々二人は練習へと戻って行ったようだった。
「で、何しに来たんだよ?」
「ん?えっとね・・・ちょっと待って。」
そういってあたしは持っていた紙袋の中をごそごそと探った。
「ハッピーバースディ、一馬くん!お誕生日おめでとう。」
「あ、サンキュ・・・。」
「あとでみんなでケーキ食べよ!」
「あぁ、わかった。じゃあ、待っとけな。」
「うん!」
それからあたしは色々なことを考えた。
一馬くんは、サッカーが本当に上手いなぁ、とか今日の誕生日、喜んでくれるかな?とか。
早く一馬君、練習終わらないかな?って思ったりもした。
「一馬―!帰ろうぜー!」
練習が終わった。
「悪ぃ、今日はと帰っから。」
「じゃー、俺も一緒に帰るー!」
「いいじゃん、そうしようよ。みんな、練習お疲れ様!」
「ちゃん、優しいー!」
一馬くんと、あたし、若菜くんと郭君が並んで歩いた。
それで一馬くんの家に寄った。
「そうだそうだ。はい、ケーキ!」
そんなに暖かい場所においていたってわけでもないから、大丈夫。
「サンキュ。」
「じゃあ、これは俺と結人からね。」
「・・・サンキュ、英士、結人。」
「それじゃあさ、ろうそく消そうよ。」
「あぁ、そうだな。」
部屋中を真っ暗にして、ろうそくに火をつけた。
“おめでとう”って言って、一馬くんは火を消した。
一瞬の暗闇の時、唇に何か当たった気がした。
電気をつけて部屋が一気に明るくなる。
一馬くんを見ると、にって笑ったから、一馬くんだったのかー。って思った。
あたしのファーストキスは、ろうそくを消したあとの一瞬の暗闇。