バイバイ、あたしの家。
バイバイ、みんな。
じゃあね、いつかそう言えるいい友達に会えますように。
お隣サン -不破家-
「ー!お隣さんに挨拶行くわよ。」
あたしは今日からこの場所に引っ越してきた。
これからご近所さんに挨拶に行く。
あたしが越してきたのは、マンションじゃなく、一軒家だ。
まず隣の家に行く。
右隣。
何か、少し変わった形の家だ。
挨拶はあたしと母さんで行く。
「ごめんくださいー!」
呼び鈴を押す。
「はーい。」
「あ、どうもこんにちは。」
中から人が出てきた。
若い感じのメガネの女の人。
きれいな感じ。
「あの、私たち今日隣に引っ越してきたといいます。」
「そうなんですか。どうもご丁寧に。不破といいます。よろしくお願いします。」
そう不破さんが言った時、後ろにふっと人の気配がした。
「あら、大地。おかえりなさい。」
後ろの人はちらりとあたしを見た。
「あんたは?」
「え?あたし?」
「お前以外に誰がいるんだ?そもそもお前は人の家の玄関でペチャクチャペチャクチャと話をして。どうせもっと長くかかるんだろう。」
「大地。そんな事を言わないで。そうだわ。さん、よかったら上がって?」
「でも悪いわよ。今忙しい時間なんじゃないの?」
「大丈夫よ。ほら。お嬢さんも一緒にどうぞ。」
「悪いわね、不破さん。じゃあちょっとだけお言葉に甘えようかしら。」
「ええ、そうしてちょうだい。」
こうしてあたしたち親子は不破家にお邪魔する事になった。
それにしても、あの変な子供は何だったんだろう。
よくわかんない。
まぁ、いっか。
「お前の名前は?」
なぜ今あたしはここにいる?
ここはと言うと、あの不思議な子供の部屋。
なぜか不破さんにはコイツの部屋に通された。
「あ、えと、。」
「そうか。」
「あんたは?」
「不破大地。」
「そ。」
つ、続かない!
見事に単語でしか返事が返ってこない。
「。」
「な、何よ。」
いきなりコイツ、あたしの名前、呼び捨てで呼ぶんだもん。
ビックリしちゃうじゃんか。
「帰るみたいだぞ。」
不破大地は、ずっとぶすっとした顔をしていた。
一度も笑う事もなく。
「あ、うん。ありがと。」
「は明日から俺と同じ中学にくるんだろう?」
「あぁ、桜上水?」
「そうだ。」
「うん、行くよ。」
「そうか。また、明日な。」
「あ、う、うん。」
コイツって本当にわかんない。
急に笑うんだもん。
ちょっと、ドキッときちゃったりして。
「うん、また明日ね。」
じゃあね、大地。
いつかそう言えますように。