本当に、あたしは半端なく、単純な出会いだったと心底思ってしまう。







俺等の出会い







「あーきーらー♪」

あたしの呼んだ、“亮”こと“三上亮”こそあたしの彼氏である。

彼氏って言っても、そんなたいそうなモンじゃない。

ただ単に亮は“あたしの彼氏”って称号、あたしは“亮の彼女”って称号を持ってるとか、それくらいのことだと思う。

「あ゛?ってか・・・。」

「はーい、っすよー。にっしっしー」

「何だよ、そのにっしっしーって。」

「ん?べっつにー」

今日の亮は、いつになく不機嫌のように見えた。

「何かあった?」

「いや、今日さ、藤代に・・・」

「あぁ、出会いのこと聞かれた?」

「は?何でお前が知ってんだよ!?」

「だってあたしも聞かれたもん。『三上先輩は答えてくれないんだー』ってさ。ダメだよ、こういうことくらい答えてやらないと。後輩がお願いしてるんだしね!」

ホントはちょっとあたしだって答えたくはなかったさ。

だって、だって、あの横に居る笠井竹巳のにっこり笑顔の裏にある黒さが怖かったから・・・つい、ついあたしはいっちゃったんですよ。

・・・って訳で言い訳してみたんですね、亮に。



「あ、三上先輩に、先輩!」

「あれ?誠二に笠井君?何してんの?」

「何って、ちょっとお二人にイ・・・」

「何でもないですよ、気にしないでください。」

笠井君、その誠二の口押さえながら言ってたら、気にしたくなくっても、気にしたくなるし。

しかも、誠二凄い苦しそうだし・・・。





「ねぇ、亮。」

誠二と笠井君が去った後、あたしたちは未だに屋上でゴロゴロとしていた。

「あたし等の出会いって半端なく、普通だったよね・・・。」

「まぁ、そうかもしんねぇけど、俺はいいと思ったぜ?あぁ言う出会い方ってなかなかねぇだろ?」

「そうだね・・・。」





あたしと亮の出会い。

それはもう3年以上も前になる。



『うっわ、ごめんなさい。』

入学式の時だった。

たまたまぶつかっちゃって、慌てて謝った。

そのときに相手の持っていたものとか鞄とかその辺にぶちまけちゃったんだよ。

『ごめんなさい、大丈夫でした?』

『普通に大丈夫。お前は?』

『大丈夫です。それじゃ、すいませんでした。』

そうやってその場を去った。

あたしは、そのときよく相手の顔を見てなかったからなぁ。

だから・・・

『じゃあ、自己紹介な。次、三上。』

ボケーっとしていた所為で自分の名前を呼ばれたと思えば、全然違った。

隣の席の三上亮の名前だった。

なのに起立!って感じで、立っちゃって、凄い恥ずかしい思いをしたのを覚えてる。

その後亮に、

『お前、さっきぶつかった奴だろ?』

っていわれたんだった。

これがあたしと亮の出会いだった。



「でも、滅多にないよね、ぶつかるなんて。お互いボケーってしてたのかな?」

「かもしれねぇな。」

「でも、あたしぶつかった相手が亮でよかった。」

「まぁ、俺様だしな。」

「亮ってやっぱ、俺様なんだね。」

「そりゃぁ、そうだろ。」

「だね。亮だし。」

「っつーか、それ意味わかんねぇし。」





あたしは思った。

どんなに普通でも半端ないくらい珍しい出会いだったとしても、出会いは出会いなんだ、と。

亮と出会えてよかった、と。