何や、負けんで欲しいやなんて、珍しいことも言うねんな。
でもちょっとカッコエェよ、そういうのも。な?
せっかく好きな人に励まされてんねん、頑張らな。
せやろ?シゲ。
なんだかんだ言うたって
「また来てんの?」
「なんや、あかんのか?」
「誰もあかんなんて言うてへん。まぁシゲに会えるんはうれしいで。」
「いやん、シゲちゃん照れる!」
「キモイ。」
「即答かいな。」
彼の名前は…ちょい待って。勘違いしたらあかんよ?
彼言うたって、Heやで?ヒー!He!Boyfriendちゃうよ?わかる?ええ?
というわけで、彼の名前は佐藤成樹。
なんやかんやで昔関西おったのに今は東京におんねん。
ウチは同じ中学校に通おとる。シゲの友達やねん。
「毎日おおきにな。」
「いや、えぇよ。俺が勝手にやっとるだけやもん。あ、授業ノートは俺の担当っちゅー事になっとるらしいから、期待すんなや。」
「マジ!?最悪やん!一番嫌な奴に当たってしもうたんちゃうん!?これ。いややわ、ホンマ。勘弁。ちょー、シゲなぁ、誰でもえぇわ。水野でも高井でも森長でもえぇし最悪風祭でもえぇねん!ノート係変わってもらってや。」
「何言うてんねん。無理やろ。アホやなぁ、も。ポチはえぇとして、クラスちゃうと進み方もちゃうて。無理やって。あのタツボンがノートなんかとってくれる思うとんか?えぇ、お前のためにやで?」
「…そりゃ無理やろ。ウチ、未だにちゃんと話した事あらへんし。」
「せやろ?せやから、ちゃんと頼んだるさかい。待っとれ。」
「嘘やん!?シゲちゃん愛しとる〜!」
水野…タツボン、やなくて。水野竜也ってのが、ウチのサッカー部におんねん。学校一かっこえぇよ!
まぁ、シゲもカッコエェけど、あの水野のかっこよさには負けるやろ?
って、話ずれたな。要は、ウチが水野の事が好きや、っちゅー話なわけやし。簡単やろ?「。」
「何やねん?」
「えぇん?愛しとるやなんて、シゲちゃん、ホンマにちゃん好きになってまうで?」
「あかんって!ウチが好きなんは水野一人やもん。」
「せやろ?そう簡単に愛しとるやこ、使おたらあかん。」
「は〜い。」
シゲは…いいやつっちゃーいいやつ。ちょっとお調子者やねんけど。
毎日こうして来てくれるんはシゲだけやねん。ウチの地元かて関西やし、一人暮らし中やねん、ウチも。
せやから、むっちゃ困っとったんを、シゲが助けてくれてん。
うん、こういう話やったらシゲかてえぇヤツに聞こえんねんけど。ホンマに。
「あらあら、仲がいいわね。さ、検温の時間よ。」
看護婦さんが入って来た。何や、ノックなしかいな…て、扉全開やったし。なんちゅーアホな事してんねんなろ。
「うん、いいわ。大丈夫ね。散歩してもいいわよ。」
看護婦さんがそう言ってくれた。
せやねー…どないしよ。シゲがおるし、外にはまぁ、行けれへんわけやないけど。外言うても何もあらへんし…あるのはサッカーグラウンド…
「せや、シゲ!外、出ぇへん?」
「何やいきなり。」
「外、サッカーグラウンドあんねん。行かへん?」
「マジ!?この病院あいかわらず金持ちやんなー。えぇよ。誰か呼ぶか。せや、タツボンとか。」
「ホンマ呼んでくれるん?ありがとーシゲ!ってか、日曜やん、今日。迷惑やないかな?」
「大丈夫やて。どうせアイツの事や。練習してんねん。」
そーか。まぁ、それもそうやわな。
あの水野が家でゴロゴロしとる姿やなんて考えられへんわ。
ってか、シゲの場合はゴロゴロしてへん方が考えられへんけどな。
「じゃ、待っててな。電話してくるさかいに。」
そう言ってシゲは財布を持って公衆電話へと歩いて行った。
「あ、タツボン?俺やけどー。」
『何だシゲ?』
「今から来れるか?病院。が入院しとるとこ、言えばわかるやろ?」
『そりゃわかるけど。いいのか?俺が行って…』
「何や?何を気にしとんな?」
『お前ら…付き合ってんだろ?』
「…は?」
ホンマには悪い事しとるみたいやなぁ、俺。の好きな人に誤解されとるなんてな。もう、一瞬友達やめよか、思うたくらいや。俺、結構重症やと思わん?
ってか、タツボン何で気にしてんねん。…まさか、な。
『付き合ってんだろ?』
「何言うてんねん。アホ。付き合っとらんわ。」
『そうか。』
「来るんか来んのんか?」
『行くよ。』
「そか。じゃ、待っとるで。」
ガチャン、と受話器を下ろした。
何や、アイツ…ホンマはの事…好きちゃうんか?えぇ、なぁ、タツボン。答えてんな。
俺…なんでこんな事思うてんやろ。わからへんわー。まるでタツボンと同じで…の事好きみたいやん。
「あ、ポチか?俺や。今から―――――」
「シゲ?」
「あー、何や?」
「さっきからボーっとしてんねんで?大丈夫なん?ウチより自分の心配した方がえぇんちゃう?」
はそんな事言うんやけど。何やねん、まるで自分の事なんてどうでもえぇかのように言いやがって。こんにゃろう。俺はが―――――
「せや、シゲ。あんな…」
「ん?何やねん?」
「水野…?」
「ども。」
「何やタツボンかいな。」
ちょいと今のタツボン邪魔やな…。なんて、しゃぁないねん。にとっちゃ、おらんとあかんヤツや。生きがいやもんな。
「あ、あかんわー。ちょっと外出てくるで?」
「え!?ちょ、シゲ待ってぇな!」
「シゲ!?」
「……」
俺に気を遣わせたバツや。二人で暫くいろや。
緊張するやん!シゲのバカっ!!もう、どないしてくれんねん。水野と二人きりになんてさせんでや。
「あ、体調…いいのか?」
「え…あ、まぁまぁ。」
「そうか。」
って、会話切れてしまうやん!シゲー!お願いやから戻って来てやー!もう、あたし緊張しすぎてあかんねん。どないしよ…心臓、壊れてしまいそうや。
「あ、水野…くん。」
「何だ?」
「水野くんて…やっぱサッカー上手いねんな。前から思っててんけど。」
「そうか…?」
水野は短い返事しかしてくれへん。何か、ボケもツッコミもない…ちょいつまらん。まぁ、緊張しすぎでそれどころやないから、全然えぇねんけど。
「前にな、シゲ見に行った事があってん。そん時思うてん。何や、カッコエェ人がおんねんなぁ、て。軽く一目ぼれやった…ってウチ、何言うてんねんなろ…。水野くん、あんま気にせんといてな。」
一人でバーっと喋ってしもうた。しかもあんな事…言うてバカや、ウチ。絶対引かれてしもた。最悪や…もうやっていけへん。負けてしまう…。
「俺も…」
「へ?」
「俺もさ…あん時、さん来てた事知ってて…。シゲがいいだろ、って言ってた。すごく羨ましくて…俺も、軽く一目ぼれしてたんだよ、あの時。きっと。」
「嘘やん!?」
って、口に出してどうすんやろ、ウチ。ホンマどうにも出来ひんヤツや、自分ってのは。どうしようもなく嬉しくて言葉には『嘘』なんて事でしか信じられなくて…。
「嘘なんか言ってどうすんだよ…。」
水野は少しムッとして言った。何や、可愛いトコもあんねんな。新たな一面発見、みたいな感覚やねんな。ってか…
「シゲ!?何見てんねん?」
「…シゲ?」
水野もドアの方に振り返って一緒に睨んでやってんで。
「あら、バレてしもうたん?おもんないなぁ。まぁ、えぇ雰囲気やん。お互い好きやってんなー。俺は知っとったけど。付き合うんやろ?おめでとさん。」
「ありがとー…ってちゃうやろ!?なんでおんねん?風祭とか高井とかは!?」
「みんなもうグラウンド行ってんで。行くか?俺らも。」
「行く!水野、行くで!?」
「お、おう。」
ウチは車椅子やったけど、3人並んで歩いた。
何やかんやあってんけど…えぇ日やと思うてたんよ、ウチは。
まぁ、な…あれから…あんな事になるとは思うてへんかったけど。
半分は…シゲの所為やねん!責任とれや!ボケぃ!
でも、ウチな、思うてんけど…
このまま水野と付き合うてえぇんやろうか?
まだ、本気でわからへんねん。
せやかて、水野のことは好きやねん、多分。
でも…それ以上かもしれん。
「さん!」
「風祭や!久しぶりやなぁ!」
「大丈夫なの?」
「大丈夫やで。」
「そう、よかった。」
えぇやつや、風祭。
んで、めちゃかわえぇねん。
多分女のウチよかかわえぇわ。
「おー、!」
「高井!森長!久しぶりやっ!」
「元気だったー?」
「おうっ!」
ウチはサッカーなんてでけへんから、見てるだけやったけど…。
めっさかっこえぇわ。
水野もやけど、シゲも風祭も。
あ、もちろん高井も森長もな。
「水野…」
ウチ…決めてん。
わかったんよ、水野は憧れやったんかな、って。
ウチがホンマに好きなんは…
「ごめん、水野。ウチ、水野とは付き合えへん。」
「何で?」
水野は冷静やな、こういうときでも。
「ウチ、さっきあんなこと言ってんけど…気づいてん。ウチ、水野のことは憧れやったんやと思う。もっと、別に『好きな人』がおったんやと、思うねん。」
「そっか。」
「ホンマにごめん。水野とせっかくこうやって話が出来るようになってんのに…。もったいないことしたとは思ってんねん。なぁ、友達になれへんかな?ウチら。」
「あぁ。友達な。」
「水野!おおきに!ホンマに…。」
「いいって。それ以上何も言うなよ。」
「おう…。」
水野はあんな風に言ってくれたわけやけど、傷つけたんよな、ホンマに。
どうしよう…。
ウチ、ちゃんと伝えるべきなんかな…?
「あ、シゲ。おおきに。」
「えぇよ。ちょっと長ぉ外おりすぎたかな?」
「大丈夫やって。これくらい。ウチはこんなんで死んだりせぇへんわ。」
「せやな。お前、不死身そうやし。」
「何や、失礼やなぁ…。」
「なぁ、…よかったんか?タツボンのこと。」
「…あれでえかってん。あれで…。」
「じゃあ、言ってしまおかな。」
「何や?」
「好きやねん、のこと。」
「おう。」
「何や、そのおうは!?」
うるさいねんな、シゲ。
返事はしたるよ、もちろん『OK』の方で。
だって、水野を断ったんは、シゲのこと、好きやてわかったからやもん。
そんな、なんだかんだ言うとったって、しゃぁないやんな、大好きやねんから。
「好きやねん、シゲが。」
「さよか。」
「明日、楽しみやわ。」
「はいはい。ちゃんと待っとれよ。」
「言われんでも待っとるわ!」
「ほなな。また明日。」
「また明日な。」
大好きなシゲに会えるのが待ち遠しいわ。
はよ、明日が来ぃへんかな…。