空に流れゆく雲ってさ、一人ぼっちだよね。
何の為に、誰の為に流れてゆくのか、僕にはわからない。
たった一人、広い場所で何を考えてんのかな?
もし僕が、あの雲の上に乗ることが出来たら、
少しは、雲の気持ちがわかるかな…?
雲
「ちゃん!!ごめん!」
「いいよー、将。」
今、僕は待ち合わせ場所についたばかりだ。
幼馴染で待ち合わせ相手のちゃんは、遅れてきた僕を笑って迎えてくれた。
そんな暖かい春の日。
空は青く、雲が流れていた。
「ってか、将またサッカーやってたの?」
「うん。」
「よく練習するねー」
「だって僕、下手クソだから、練習しないと上手くなんないんだよ。」
「何言ってんの!将は十分上手だって!練習もいいけど、ちゃんと休んで、体壊さないようにしてね?」
「うん!」
いつも僕のことを思ってくれてるちゃん。
そんなちゃんが僕は大好きだ。
でも、ちゃんには、僕よりもっとカッコいい彼氏がいるらしい。
聞いた時は僕、スゴいショックだったっけ。
「ねー、将!」
「え?」
「たまには、サッカーの事だけじゃなくて他にも沢山楽しいことしようよ!」
そう言って、手招きをする。
ちゃんのもとへと僕は走った。
「ねー、将と二人で遊びに来るのって、初めてだよね?」
「うん。前は功兄がいたしね!」
「功ちゃん元気?」
「うん。ピンピンしてるよ。」
「そ。よかった、よかった。」
やっぱりちゃんは優しいな、って思う。
僕の事も、功兄の事も気遣ってくれるから。
「…?」
「?」
「何…してんだ?」
「こそ、何してんの?」
「いや、待ち合わせ…。」
「へぇ、誰と?」
「え…誰って…」
「くん!!」
いきなり女の子が手を振って走ってきた。
現れたのはいたって普通の女の子。
でも、来た途端、くんって人の腕に抱きつく。
「〜何して…」
女の子は、状況を察したみたいで、黙り込んだ。
「浮気?」
「もだろ?」
「…そうよ!」
「あぁ、そーだろーな。」
「じゃあね、くん。将、行こう。」
「あ、う、うん。」
足早に歩いて行くちゃんを、僕はまた、走って追う。
「ごめんね、将…」
「え?」
「将のこと…ずっと好きだったのに…なんかと…」
ちゃんの本当の気持ちがわかった。
今…初めて。
「あたしがと付き合ったら、将も振り向いてくれたりとか…やきもちやいてくれたりとか、するのかな、なんて調子のいい考えよね。」
それからちゃんは、今までのこと、くんと付き合う前のことや、それから、今に至るまで全部、話してくれた。
「僕もね、ちゃんのこと、ずっと好きだったんだよ?でも、彼氏がいるからって、諦めかけてた。」
「…バカだね、あたし。」
やけに明るく振舞っていたちゃんは、無理してるのが何となくだけど、わかった。
見ているこっちが悲しいくらいに。
「ごめんね、将。」
「ううん…」
「これから…あたしと一緒にいてくれる?」
「うん。」
今まで一人きりだった雲は、ちっちゃな雲と一緒になった。
これでもう、一人じゃない。
形は一つだけど、心は二つ。
僕たちの雲はこれからも、どんどん進んで行くんだろうな。
いつか、あの雲の上に二人で行こうって約束をして、手を繋いだ。
暖かい春の日のこと。