連絡がないのは、あなたが幸せだから?
ねえ、そうでしょ?
幸福論
「じゃあ…またな。」
「うん、見送りありがとうね。」
「…ん。」
「そろそろ、行くね。」
「うん。」
「バイバイ。」
今日あたしは、この地を去る。
この笠井竹巳とも最後の別れになるかもしれない。
遠距離恋愛、しようね、って約束はしたけど…。
でもそれは、上辺だけの言葉じゃないの?
竹巳には…あたしじゃない好きな人がいることも知ってる。
だからってあたしはこの地を去るわけじゃない。
竹巳の幸せを願うにはもう少し時間がかかるかもしれないけど、もうちょっと待ってて。
きっとすぐに笑顔で笑って会えるようになるから。
逃げてるわけじゃないよ。
あたしは、まだ竹巳が好きだよ。
だけど…もう無理だよ。
「竹巳…?」
「ん?」
「最後に一つだけ、言っても…いい?」
「うん、何?」
「…と幸せになってね?」
「…何で、?」
「ごめん、ずっと知ってたんだ。なのに、別れてあげられなくて、ごめんね。」
「…俺の方こそ…。」
「もう、いいよ?大丈夫だから。と何かあったらメールでも、電話でもして?」
「でも…」
「いいの、あたしはやっぱり竹巳が好きだから、そうすることでしか今は竹巳の幸せを祈ることはできない。」
「…。」
「ただし、竹巳の幸せな話はダメだからね。何かあったときだけ、あたしに教えて?」
「…うん。」
「竹巳から連絡が来ないのは、きっと幸せだからだ、って思ってるから。」
「うん…。」
「じゃあね。」
これで、よかったんだよね?
これで…。
大丈夫、泣かない。
あたしはそんなに弱くないよね?
4ヶ月後
あれから竹巳からの連絡はない。
きっと幸せだからだ。
信じてるよ、幸せだって。
連絡が来ない = 幸せ
そうだと、思ってるからね。
ね、竹巳。
そう思ってる想いが…あたしなりの幸福論。