あたしのバイト先はある中学校のすぐ裏にある。

変わってないと思う・・・っていうか変わるはずないけど、中学生のお昼は給食だよね?




コンビニ




「え、いっつも夕方に来る金髪の男の子?」

さん、知りませんか?」

「言われてみれば見たことある気がするけど、その子がどうしたの?」

「いや、別になんでもないです。」

あたしのバイト先は桜上水中のすぐ後ろにあるコンビニ。

毎日夕方、部活帰りに必ずと言ってもいいほどこのコンビニに寄る。

毎日来る子だし、中学生なのに金髪の髪は印象が強すぎだからね。

気になるんだよね。

だからって知り合いになりたいわけじゃないし、付き合いたいとかも考えたことはない。

・・・嘘です、ごめんなさい。

知り合いになりたい、っていうかなんか・・・

『今日も来たんだね』

みたいな話が出来るくらいの仲になりたい・・・って思ったことはあるよ。

だって、その子・・・めちゃくちゃかっこいいんだもん。

性格、気にしないわけじゃないけどさぁ、10代の内くらいは顔で選んじゃう、そういうもんでしょ。

「いらっしゃいませ」

定番の挨拶が横にいるさんの口から聞こえてつられて挨拶をする。

・・・あの子だ!!

金髪にピアス、間違いないよ。

声かけるほどの仲じゃないもん。

最初が・・・きっかけが足りない。

レジに来てレジ打ちをする。

今日はスポーツドリンクとガム。

いっつもこんな感じの買い物。

「えっと、248円になります。」

もうこのバイトを始めて3ヶ月。

慣れない。

未だに慣れない、このセリフ。

自分がお客側だときっと平気なんだけどな。

差し出された500円玉。

お釣りを渡すこの時が一番緊張する。

手と手が触れそうで触れない、緊張の瞬間。

「なぁ、ねぇちゃん、お釣りの金額ちゃうんやない?」

関西弁のインパクトに押されて、何も聞こえなかったかのように感じた。

「せやから、お釣りの金額ちゃうで。」

「あ、すいません。」

あたしはバカか。

単純な引き算くらい出来なきゃ。

「すみませんでした。」

「えぇねん、謝るくらいやったらさっさと足らん額くれへんかな?」

・・・何、コイツ。

すっごく意地が悪いんじゃないの!?

「まぁ、そんな怒った顔すんなや。」

「すみませんでした。」

お釣りを渡した。

だけど彼は受け取ってくれない。

「・・・いらないんですか?」

「いらんわけとちゃう。今日のバイト何時に終わんねん?」

「く、9時。」

「せやったらまた9時ころに来るわ。そん時にちょうでぇな。」

「・・・あ、はい。」

何が何だかわからない、って顔をしてると彼はウインクをして店を出て行った。

さんは隣のレジでお客さんのお会計を済ますとニヤニヤしながらやって来た。

「やったね、ちゃん。」




9時、バイトが終わり、着替えをして店を出た。

「お疲れさん。」

「・・・あ、はい。コレ・・・。」

さっき渡しそびれたお釣りを渡した。

「おおきに。せや、名前、何て言うんや?」

・・・」

「俺は佐藤成樹っちゅうもんや。」

名前を聞いたのも、喋ったのも初めてだった。

だけど、初めてって感じがしなかった。

年下だから?

中学生だから?

こんな恋の始まり方だってありでしょ?

何も・・・誰にも左右出来る事じゃないんだから。

あたしは・・・今、この子を好きになる予感がした。

女の第六感が当たらない、っていうのは・・・どうなんだろうね?