あたしは、桜上水サッカー部のマネージャーであり、水野竜也の彼女でもある。
たっちゃんは、部活とか選抜で忙しい。
あたしも、マネージャーの仕事やサッカーの練習で忙しい。
おかげですれ違いがどんどん増えていく。
さみしいね…
絆
「ねぇシゲ!どう思う?」
あたしはよく、シゲに相談する。
シゲは、あたしよりたっちゃんのこと、わかってると思うから。
「どう思う言われてもなぁ…」
「どうなの?」
「っと、約束あるさかい、行かな!ほなな!」
シゲめ…逃げたな…
「!」
「たっちゃん!?」
なんでココにいるの…?あたし、シゲに相談してたこと言ってないよ?
今の話…聞かれた?
「お前、シゲと何話してんだよ?」
聞かれてはなかったみたい…でも。
「別に、たいしたことじゃないよ。」
本当はたいしたことじゃない、なんて言えないけど。
たっちゃんに直接言うなんて、出来ないよ。
「たいしたことないのに…シゲには話すんだな…なんで…俺に…」
「本当にたいしたことないって言ってるじゃん!」
「お前、何怒ってんだよ!」
「たっちゃんだって、たっちゃんだって…」
「たっちゃんって言うなよ!」
たっちゃん…?
「もう、わけわかんねぇよ。俺もう、お前とやっていく自信、ない。」
それだけ言い残してたっちゃんは去って行った。
あたしはどうしたらいいかわからない。
ただ単に泣くことしか出来ない人形のよう…
あれから一週間がたった。
まだ、たっちゃんとは一言もしゃべってはいない。
あたしもだけど、たっちゃんも避けているみたい。
「。元気なさそうやな。タツボンも機嫌悪いし、ケンカでもしたんか?」
「したよ……。」
「せやったか…」
「ケンカして…別れるんか?」
「まだわかんない。もう一週間経っちゃった。だから、多分…」
「そか。」
シゲがダルそうに、言った。
ゆっくりと。
「別れるんやったら…俺と付き合わへん?」
「は?」
思わず変な声をあげた。
「せやから、俺と付き合うて欲しい、言うてんねんけど。」
「何、冗談…」
「冗談やない!」
聞きたくない、聞きたくない!
もう、やだよ!
あたしはその場から立ち上がって、
「ごめん。」
そう一言残して走った。
ピンポーン
あたしは気がつくと、有希の家の前に来ていた。
「…上がる?」
「うん。ごめんね。」
有希はあたしの様子を察したのか、中へ招き入れてくれた。
しばらくの沈黙の後に、有希が口を開いた。
「水野と…何かあったの?」
「有希…」
「何?どうしたの?」
「ケンカ…したの。」
「ケンカ?」
有希に全てを話した。
たっちゃんとケンカしたことも、シゲに告られたことも。
「そんなことがあったのね。」
「うん。」
「でさ、。あんたはどうするつもりなの?」
「え?」
「このまま水野と仲直りできずにシゲと付き合うのか、水野とと仲直りしてやり直すのか。どっち?」
どっちにしたい、なんて考えたこと、なかったよ。一度も。
「でも、大丈夫そうだけど。」
「え?」
そういわれたとき、何が何だかわからなかったけど、有希は教えてくれた。
『水野がうちの前に来てる』って。
「たっちゃん!たっちゃん!」
「…」
たっちゃんは、あたしに気づいてくれた。
「ごめん…たっちゃん、あの…」
「ごめんな。」
「え?」
「ごめん。ごめんな、。俺、前にすごい酷いことに言ったんだよな。反省してる。俺さ、やっぱりのこと、好きなんだよ。だから…」
たっちゃんは少し、赤くなって照れながら言ってくれた。
いつも強気なたっちゃんじゃなくて、あたしの目の前にいるのは、いつもとは少し違う弱気な、たっちゃん。
あたしが断るわけ、ないのにね。
「うん。」
それから、あたしとたっちゃんは仲直りをした。
が、問題はこの人だよ。
「そういうことだから、ごめんね。シゲとは付き合えないよ。」
「そか。仲直りしたんか。」
「うん。」
そう言うと一人納得したかの様に、シゲは小さな声で言った。
「どーぞ、末永くお幸せに。」
シゲの本当のやさしさにあたしは、今頃気づいたよ。
シゲ。本当に、ごめんね。
「!」
そんな事を考えていたら、たっちゃんに呼ばれた。
「行こう。」
「うん!」
それから、数週間。
シゲは相変わらず。
もちろん、あたしもたっちゃんも相変わらずなんだけど。
あたしとたっちゃんの間には強い絆があるんだよ。
こんな風にケンカはしたけど、そのおかげだと思うの。
ありがとう、たっちゃん。
ねぇ、大好きだよ。