授業って長い・・・。

あと1時間で週末、ってそんな金曜日は特に。





金曜日の午後





「終わった?」

「どーせ寝てたんでしょ?あと1時間あるよ。」

「・・・マジ?!」

「マジ。」

金曜日、天気は晴れ。

真っ青な青空。

気分は自然と澄んでいてもおかしくはないのに。

なんでこんなモヤモヤしてるの?

「・・・あ、風祭?」

さん。」

「風祭、ほっぺ赤い。寝てた?」

「そういうさんだっておでこ真っ赤だよ。」

あらら、バレてる。

隣の席の風祭将は小柄でかわいい感じの男の子。

サッカー部って、忙しいのかな?

毎日授業は寝てばっかり。

「サッカー部、たいへんなの?」

「んー・・・僕が下手だから・・・。練習しなくちゃみんなに追いつけない。」

「・・・そっか、偉いね風祭は。」

さんは?何か部活とかやってなかったっけ?」

「あ・・・部活はやってないけど、一応・・・バンドやってる。」

「すごい!バンドなんて出来るんだ。さん何やってるの?」

ここまで食いついてくるとは思わなかった。

まぁ、犬っころみたいだし、かわいいから何も言わないけど。

「・・・ギター兼リードボーカル。」

さんって歌うまいもんね。」

「え?」

「前、音楽のテストで聴いてた。」

そんな事まで覚えてなくていいよ。

言わないでいてあげるけど。

キーンコーンカーンコーン

「あ、予鈴だ。」

そう言って風祭は自分の席に戻っていった。

・・・あたしの事散々褒めておいて、あたしにはアンタを褒めさせてくれないの?

自分だけ褒められるのって・・・好きじゃないんだ。

あと1時間の授業もどうでもよくなってきた。

・・・なんか、歌いたい気分になったんだ。





金曜日、6時間目・・・数学。

何で1週間の終わりに数学なんて教科を持ってくるんだろう・・・。

大人たちってホント・・・わかってない!

数学は・・・ほんとに、眠いんだから。

毎時間寝てる風祭とあたし・・・あ、あと佐藤成樹。

3人は居眠り常習犯で、先生たちの目がつい最近まで光ってた。

ちょっと前から光が消えてきて、だんだんそれは「呆れた」という目に変わった。

別にいいけどね、うるさくなくて。

っと、あたしがそんな数学で今日は何で寝てないか、っていうと・・・隣で大きな寝息をたてて寝てるちびっ子のせい。

あたしの歌なんて・・・褒めたせいだよ、風祭。

歌、歌いたくなっちゃったんだもん。

でも今まで作ってきた歌じゃない。

・・・新しい、何か・・・。





、もう授業おわったのにアンタが残ってるなんて珍しいね。」

・・・。だって、おわんないんだもん。」

「・・・ゲ。アンタ、授業中に曲かいてたの!?」

「うん。だって、他にすることないんだもん。」

「あるでしょ、授業を聞くとか、ノートをとる、とか。」

「嫌だよ、めんどくさい。あたしは今、歌のことしか完全に考えられなくなってるから!」

「・・・あ、っそう。別にいいけど。」

に声をかけられて初めて気付いた。

授業はもうとっくに終わっていて、さっきまでざわついていたはずの教室はカラになっていた。

「・・・ほら、帰ろうよ?」

「ごめん、。先帰って。」

「え?」

「先帰ってて?」

「・・・わかった。またね。」

「うん。」

今日はこの曲仕上げるまで帰らない。

・・・家に帰るともう頭の中、わけわかんない事になっちゃいそうだから。

それに・・・

「あたし、アンタの歌書いてんだよ?風祭。」

大きな夢、捨てきれない野望。

普段は小さいその背中が、ふっと大きく見えることがある。

そんな一瞬が見たい心。

忘れられない、今日という日。

アンタの事を初めて、大きく感じた。

そんな金曜日の午後。