か弱く光る星へ
「転校、か。」
「うん。ごめんね、かっちゃんともっと一緒に居たかった。」
「あぁ。」
「好きだよ、かっちゃん。」
「あぁ。」
かっちゃんは、好きだとは言ってくれなかった。
数ヶ月前、かっちゃんからの手紙が来た。
そこには書いてあった。新事実。
『ずっと好きな人がいた。もちろん、の事は好きだった。でも、もっと好きな人がいたんだ。ごめん、。ごめん。』
短い文章でやけに綺麗な字。
かっちゃんらしいよ。
どうしようか。好きなのに、まだ。好きなのに。
「何や?手紙かいな?」
「ちょ、何するの!?」
「何なにー…」
「読んだでしょ!?」
「当たり前やん。今ので見えてへんかったら異常やわ。」
「何すんのよ。」
「えぇやん。ちゃんが振られた事くらい、内緒にしとくさかい。」
「バカ!吉田。」
「うわ、ちゃん酷っ!ってか、キツイで、それ。」
「うるさいわ。」
関西のとある場所へと引っ越してきた私は、吉田と友達になった。
吉田、吉田光徳は、みんなにノリックって呼ばれてるお調子者。
関西弁喋って…ってみんな関西弁だけど。とりあえず、まぁいいやつなんだけど。
「ちゃん、そんなに悲しんだらいかんよ?僕が癒してあげようか?」
「何よ、癒しって。」
「今日、僕のチーム見て行けばええよ!」
「チーム?」
「そや。サッカーしてんねん、僕。」
「は!?吉田サッカーなんかしてんの!?」
「せや!かっこええやろ。」
「かっこいいね。」
吉田はそれ以上調子のいい事を言わなかった。
なぜだかは、わからないけれど。
「とりあえず、見に来てみ?絶対、面白いさかい!」
「わかった。」
じゃ、放課後な!とそう言って吉田は手を振った。
「ちゃん!元気になったー?」
「ちょっとよ、ちょっと。」
「そか。じゃあ、行くで。」
「あ、うん。」
吉田はサッカー場へと連れて行ってくれた。普段は入れないような場所。
「凄っ!広っ!」
「せやろー?僕ら、これからココで練習するねん!」
「マジでっ!?見てていいの?」
「もちろんやてっ!」
「ありがと、吉田っ!」
「どーいたしまして。」
吉田は、席をある程度指定してから走って行った。
でも、いいのかな?他に見学者とかいないよ?いいの?
「あんさん、誰や?」
「は?」
「あれ…あんた、武蔵森の…?」
「桜上水のGK…?」
「あれは臨時や!本来はFWやねん。」
「やっぱ、そうなんだ。なんで?ココに居るの?」
「自己紹介忘れとったな。俺、藤村成樹。関西選抜FW。吉田と2トップ組んどる。」
「あ、あたし、。ちょっと前にこっちに引っ越してきたの。」
藤村は、シゲでええよ、って言ったけどいきなりだから断っておいた。
「でもなんで…。」
「戦いたいやつがおんねん。」
「戦いたいやつ?」
「風祭、ってわかるか?」
「あのちっちゃい…」
「せや。あいつや。」
「かっちゃんからゴールを奪った…」
「かっちゃん?」
「渋沢…」
かっちゃんのフルネームが言えなかった。ちょっと思い出したから。
「あぁ、渋沢か。あんた、渋沢の彼女やろ?」
「違う。」
「藤村!ちゃんナンパせんとさっさと並ばんかい!」
吉田が叫んでくれた。
藤村はほなな、と言った。
気まずいよ、ココ。
吉田の実力は大したものだった。ちょっと、かっこいいとか思ってしまう。
「かっこよかったやろ?僕。」
時間は夜、場所は帰り道の公園、二人きり。
「うん。」
「せやろ!あ、星が綺麗やな…」
「ほんとだね。綺麗…」
「何かちゃんってあのちっちゃい星みたいや。」
「ちっちゃい星?」
「せや、か弱く光ってんねん。星。自分がどんなにちっちゃくても、か弱くても、精一杯光り続けて頑張ってるやろ?似てる。」
「そ、そう?」
「せや。頑張れ、ちゃん!負けんな!かっちゃん、やっけ?そいつよりいいやつなんていっぱいおんねん、きっと!男はよぉけぇおるねん!僕かてそうやし、藤村やって。」
「そうだね。」
「せや!がんばれ!負けんな!僕が応援してやる。」
「応援だけじゃなくて、あたしは吉田にも一緒に戦ってほしい。一緒に、負けないように戦ってほしい…な。」
「ええよ。僕、ちゃん好きやもん。」
「うん。」
か弱く光る星へ
頑張ってますか?そう聞いたら、きっとあなたは、頑張っている、って答えるんだと思う。
あたしもがんばってます。
吉田と一緒に毎日楽しい日々を送っています。
かっちゃんのことは確かに、つらかったけれど、今じゃもう大丈夫。
吉田がいるから。
吉田があたしの横に居る限り、あたしは、頑張り続けられると思うの。
だから、あなたも頑張って。輝き続けて。
か弱く光る星でも、いつかあなたの傍に来て一緒に光ってくれる星はいると思うの。
だから、頑張って。
か弱く光る星。