『私ね、飛べないんだ・・・』

そういった君を、僕はもうほっておけなくなってしまった・・・。



片  翼



あぁ、あれからもう3ヶ月という月日が流れた。

時間が流れるのはやっぱり、早くって、あれから何の進歩もない。



-----3ヶ月前。



『私ね、飛べないんだ・・・。もう、ずっと。これからずっと飛べないんだ。』

『な、何で?』

『・・・翼がなくなっちゃったの。私の翼・・・。』

俺の名前、翼だけど、この翼は背中にはえてる翼。

俺にははえてるのか、はえてないのかなんて関係なかった。

でも、この、このコイツの言葉でずっと気にしてきた。





今日もいつもと変わらないかなー?なんて思った。

いつもどおりに、学校に来て、友達と話して、授業を受けて、それで部活して帰る。

ただ単に、いつもと同じ毎日なんてつまらない。

俺だって普通に言って嫌いだ。

いつもと同じなんてつまらないだけだから。

暇、なんて言ってても、ホントは他にも沢山することがあるはず。

それでも、暇、暇、って気が付けば言ってる。

もっと面白い事ないかな?って言ったとしても、あるかどうかなんて、俺にはわかんない。

ただ、あるとしたら、アイツの事を考える、って事くらい。

、これがアイツの名前。

俺はただ、の一言が気になってる。

『私ね、飛べないんだ・・・』

たったこの一言だけど、気になって仕方ない。



「よぉ、翼。」

「何だ、柾輝か。」

「何だとは失礼だな。」

「大体さ、何でこんなトコに居るわけ?」

「お前に用があるらしいんだけど、自分で言うの恥ずかしいらしいから、手紙預かった。」

「ふーん。誰から?」

。」

俺は驚いて席を立った。

いきなりだったし、柾輝も俺も吃驚してた。

「はい、それじゃ、渡したからな。じゃあな。」

そうして柾輝はその場を去って行った。



早速内容が気になって、読んでみることにした。



“推名 翼くんへ。

こんにちは。いきなりの手紙、ごめんなさい。同じクラスのです。

3ヶ月前・・・私の言った事、覚えていますか?

『私ね、飛べないんだ・・・』と言った事です。

ごめんなさい。何か、推名君が気にしているみたいで・・・。

私が言わなければよかったのに・・・本当にごめんなさい。

あの時からずっと、飛べない私。

片翼しかない、私。

そんな私を気にしてくれて、どうもありがとう。

今日の授業は、出れないと、思う。

でも会いたい、なんて思うことはないと思うけど、ずっと屋上に居るから。

会いたくなったら、来て。

私はいつでも、椎名君に会いたいよ。



追伸 手紙を渡してくれた、黒川君にもありがとうって言っておいてください。

 



屋上・・・。

俺は、屋上へと走った。

全力疾走。

その理由・・・に会いたいから。



「俺だって、ずっと、ずっと俺だって会いたいから。会いたい・・・。」

屋上についてから叫んだ。

の居ることを信じて。

「あたしも会いたかった。ずっと会いたかった。」

「あぁ。」

「でもね、私さ、飛べないでしょう?」

「あぁ、そうだな・・・」

そうだな、なんていってても、俺はそんなことないとは思うんだ。

「でもね、推名君が会いにきてくれたから。いいんだ、私。」

「俺はよくないよ。」

「え!?」

そう、よくない。

だって・・・。

「俺はさ、に来て欲しいんだよ。」

「でも、でも、私・・・」

「俺の翼をあげる。だから、会いに来てよ。もし、会いにこれないって言うのなら、俺が会いに行く。それでもやっぱり、俺は会いに来て欲しいから。だから、俺の片翼をあげるよ。俺との絆の証としてさ・・・。」

「推名君・・・」



俺の片翼はなくなった。

でも、俺の片翼はまだ生きてる。

の背中で。

二人でこれからも片翼同士生きていけると思うんだ。

元は一つだった片翼を持っているから。