小さな虫のように 

1番近くまで行きたい

近づきたい

いつか・・・

またあなたに

出逢える

その日には・・・




カナブン




「あれ、一馬くん!虫止まってるよ?」

「あ、マジ?何の虫?」

「カナブン。」

「どこ?」

「一馬くんの顔の横。」

「うわ、ホントだ。」

「一馬くん、虫嫌いじゃないの?」

「あんまり、かな・・・。」

授業中の話。

隣の席の真田一馬くんとチラチラと、コソコソと話をした。

先生にはバレないように、小さな声で。

「そうなんだ?あたし、虫ダメなんだよね。」

「でも、虫・・・ってさ、いいと思うんだけど・・・」

「何で?」

「・・・だって、例えばさ・・・好きな人にも、自分より近くにいけるんだ・・・。うらやましいと思う・・・俺は・・・。」

「そっか。」

なんか、そんな考え方もあるんだ、って思わされた。

一馬くんがこんなふうに考えるのはちょっと意外だった。

それだったら・・・あたしは・・・カナブンになりたい。

一馬くんに1番近づける『カナブン』になりたいよ。

「あたし・・・あ、気持ち悪いとかって思わないでね。」

「え?う、うん。」

「これで授業を終わるぞ。」

「きりーつ!」

起立の号令がかかった。

授業がおわる・・・。

「一馬くん、ちょっと話の続き、聞いてもらってもいい?」

「うん・・・。」

「あたし、カナブンになりたいって思った。一馬くんに1番近づける・・・カナブンになりたい。」

「・・・俺も・・・。」

「え?」

「俺も・・・に1番近づけるカナブンに・・・なりたい、って思ったんだよね。」

「ほ、本当?」

「あ・・・うん。」

「え・・・と、それは・・・」

「あ、がさぁ・・・え、えと・・・す、好き・・・って事だよっ!」

「あはっ、あははははっ!」

「な、何で笑うんだよ!」

「一馬くん、かわいい。」

「かわいいとか言うなよ!」

「あたし、一馬くんの彼女になりたい。」

「俺も・・・の彼氏になりたい。」

「よろしく、一馬くん、って事でもいい?ダメ?」

「あ、いいよ・・・。」

「うん、よろしく。」

笑ったら、笑い返してくれた一馬くんが微笑ましくて、また笑ってみた。

大丈夫、きっと一馬くんとなら楽しくやっていける。

だってカナブンになりたいと、思えたから。

カナブン・・・。

あなたのようになりたいと、願った。

でも、もう近づけた。

カナブンより一馬くんの近くに行ってやる!

あたしならいけるよ、ね?一馬くん。