明日、6月5日はあたしにとっても、

貴方にとっても大切な日になると思う。





HappyBirthDay





「わっはは、なぁ、!明日は何の日か知ってるかー?」

「さぁ、何の日だったかしら?」

「冷たっ!」

「はいはい、結人の誕生日でしょう?」

「さっすがは俺の彼女!よくわかってんじゃん。」

「まぁ、そりゃぁね。」


そう、明日は誕生日。

といってもあたしの誕生日ではなく、彼氏の若菜結人のものである。


「ねぇ、結人。」

「んー?」

「お誕生日おめでとう。あ、でもプレゼントとかたいしたもの、あげられないからね?」

「…。いいって!俺の横にがいればOKだからさっ!」

「…っ。ほらっ、練習頑張ってきなよ?後でみんなでお祝いしよ。」

「おうよっ!いってくるぜー!」


そういうと結人は走ってグラウンドへと戻った。

あたしは、結人の後ろ姿をみつめて、

少し涙が出るかと思った。




結人は、14歳になって、あたしはまだ13歳。

そしてまだあたしは、結人の居ない世界を過ごした事が無い。

結人の居ない世界なんて考えたこともない。

今まで13年間以上、あたしは結人のいる世界で生きていた。

「しょ、!」

「あれ?一馬?練習中じゃ…」

「結人が……」

「どうしたの?結人が?何?」

「結人が倒れた。」



あたしの心は壊れかけた。

ガラスのように壊れやすいココロを落として、壊すところだった。




「結人、何で倒れ…」

「疲労だそうだよ。」

「英士!?」

「大丈夫?。でも、安心してよ。命に別状はないし。」

「よかった…。」



ガラスのようなココロはわれなかった。

壊れなかった。

一瞬だけ、ホッとした。

と、同時にあたしは、少しだけ結人の世界を生きることになるのかと思った。

あたしにとって結人がいない世界を生きるということは、まだ未体験のこと。

どうなるかも、わからない。

まだ真っ暗闇の中にある世界。



「結人、結人!」

「……?」

「結人、よかった。目が覚めたんだね」

「ここ、どこ?」

「病院だよ。」

「俺、何でこんなとこに寝てんの?」

「疲労だって、英士が言ってたよ。」

「うそ…マジで?」

「よくは知らないけど。」



突然、ドアが開いて、英士と一馬が入ってきた。



「結人、大丈夫?」

「悪い、二人とも。」

「でも大丈夫そうでよかったよ。ね、一馬。」

「ん?お、おう。」



いつもの三人が集まって、三人の笑い声が聞こえた。

あたしはそれだけで幸せだった。




病院からの帰り道、あたしは一馬と二人で帰った。



「ホントたいしたことじゃなくってよかったよ。」

「そうだな。」

「ったく、なんで疲労?」

「それは、アイツ…」

「何?知ってるの?」

「いや、それは俺の口からじゃいえないし…」

「いいよ。教えてよ。」

「アイツ、バイトしてたんだ。」

「バイト?」

「そう。新聞配達。」


新聞配達、現役中学生がするような仕事とは思えない。

ましてや結人は特に。



「それで、朝は配達、昼は学校、夜はサッカー。ずっと動いてんだよ、結人は。」

「何でまた、バイトなんか。」

「それは結人に聞いてくれよ、な?」



うん、そう返事をしてわかれた。

それから一人になって孤独。

ずっと結人のことを考えた。



「結人!」

「…!??」

「何でバイトしてたの?」

、お前何で知って…」

「一馬に聞いたのよ。」

「…あの野郎ぉ…。」

「さぁ、教えてよ、結人!」



結人は押され負けした、とでもいうように少し下を向いていた後、

ゆっくりと顔をあげて恥ずかしそうに言った。



もさ、誕生日もうすぐだろ?」

「うん、もうすぐだけどさ。」

「誕生日プレゼントちゃんとしたものあげたかったんだよ。」

「プレゼント…?」

「そ。」



あたしのためと知ったとき、自然と涙が出た。

涙が暫く止まらなかった。



ー、何泣いてんだよ!ってか、泣かないでくれよなーっ!!」

「だ、だって。結人があたしのためにって。倒れてまで…」

「お前だから、のためなら、俺さ、いくらでも頑張れるんだって。」

「…あり、がと。」








――――――――――数日後。








「誕生日、おめでと。

「ありがとー、結人!」

「これ、プレゼントな。」

「開けていい?」

「おうよ。」

「…これって。」







「そ、指輪。俺とお前の約束の指輪な!」