第四章

 

 

 

 

「渋沢って料理うまいんだな!これ、めちゃくちゃ美味い!」

「そうか?ありがとう。」



チャ〜ラ〜♪

「!!?」

「渋沢!」

「畑、落ち着け!これは…」



「放送が、ついにきたか。」

「誰か死んだと思うか?水野…」

「そんなこと言うなよ、桜庭。信じるんだ。」

「…あぁ。」

『皆さん、こんばんは。記念すべき第一回の放送をします。さて、メモをとるなりして、しっかり聞いてちょうだい。聞き逃しのないようにね。』

聞き逃しはしない。

たとえ、どんなことがあっても…。

『えーっと、まずは死んだお友達から発表するわね。死んだ順番よ。まずは、鳴海貴志くん、谷口聖悟くん。それから…』

まだ、居るのか!?

俺たちが知らない間に、何が起こったんだ?

『風祭将くん、若菜結人くん、内藤孝介くん、間宮茂くん。以上の6名です。ペースはまだまだ。でも、初めにしては上出来だわ。みんなこれからもどんどん、殺しあってちょうだい。フフッ、悲しんでばっかりじゃダメよ。仲の良いお友達が死んだと言っても。では、禁止エリアを…』

待てよ、風祭って…名前言ったか?

風祭将って…

「大丈夫か?水野。」

「え?あ、あぁ…」

「風祭は…死んだ。」

「あぁ。

「いいヤツだったよな、熱心でさ、純粋で。何かドジなトコとかもあったけどさ。何でこんないいやつばっか死ぬんだろうな。」

「そうだ、な…。」

「行こうぜ、水野。」

「行くって、どこに?」

「ずっとここに居たって仕方ねぇ。生きる為に行くんだ。場所なんてない。あいつらの分も、俺たちは精一杯生きる。そうするのが、一番だろ?」

「…そうだな。」

俺の中で流れる悲しみのメロディは、いつまでたっても消えないかもしれない。

でも、桜庭にばっかりこうやって元気づけられてばっかじゃ、ダメだよな。

俺と同じくらい、みんな悲しんでるから。


「何で、6人も…」

「せやな。」

ポチ…もう、逝ってしもうたんか?

お前、早すぎるで。

お前、まだ死にとうないって、勝ち組に残ったんやろ?

せやろ?なぁ、ポチ。

俺ともう一回勝負してほしかったで、カザ。

「何で…人間ってこんなに無力なんでしょうね?」

「さぁな。わからへんよ。」

「人間どこか壊れれば、全て死ぬわけじゃないのに…治る可能性だって…あるのに。」

。お前は悲しんでばっかりじゃあかんで。わかっとるか?進まなんとあかんねん。俺たち、まだ命あるんやから。生きてんねんで?」



「ったく…何してんだよ、高山。」

「す、すまん!」

「ったく…」

「し、椎名。ちょっとよかと?」


「なんだよ…」

「そこ…何がおると?」

高山は、草陰を指して言った。

別に、何も見えるってわけじゃない。

ただ、見えないってわけでもない。

気配が、する。

「さぁね。僕に聞かないでほしいよ。」

「なんじゃー!調べてほしいったい。頼む!」

「高山うるさ「昭栄!お前うるさか!少しは静かにせんとね!?」

「ちょっ、待ちなさ…って、遅いわね、もう。」

「カズさん!?と…誰ですか?」

「小島有希。桜上水中2年女子サッカー部キャプテン。私が、功刀くんのペアなのよ。」

「カズさん、こんな女と…ご愁傷さ…」

パコーン

?何の音だよ。

って脳が意外にも冷静に僕に思わせたのは、目の前の状況をある程度の見込めていたから。

「痛ー!!」

「こんな女ですって!?何よ、バカ。椎名もこんなバカとでかわいそうだわ。」

「カ、カズさん…」

「昭栄が悪い。」

「カ、カズさんまで…!?」

どいつもこいつもバカばっか。

呆れてることしか僕には出来ないよ、まったく。

「ねぇ、椎名。これからどうするつもりだったの?」

「何?聞いてどうにかなるわけ?」

「そりゃあね。協力出来ることはするつもりよ。ねぇ、功刀くん。」

「そうたい。」

「そのために、あなたと高山を探してたんだから。」

「…いいよ。僕たちはこれから、を探しに行くつもりだよ。」

「は!?俺、聞いてなかとよっ!」

「黙ってて。」

「…なんじゃあ、椎名。」

うるさいったら、ありゃしないよ、ホントに。

「椎名、あのって子、探しに行くんでしょ?」

「うん、そうだよ。」

「私たちにも手伝わせてほしいの。」

「何で?」

「理由がいるの?」

「まぁ、一応ね。」

「いいわ。私たちだって、命が惜しいの。ただ、それだけよ。」

命…が惜しい、か。



「なぁ、黒川!」

「なんだよ、小岩。さっきから俺のこと呼んでばっかじゃねえか。また、『何でもねぇ』じゃ済まされねぇぜ?」

「だ、大丈夫。黒川って…会いたいヤツって、いるか?」

「そりゃぁな。」

「うわ、即答!?」

「悪いかよ。」

「いや、全然…。」

「そういうお前は?」

「いる…んだと思う。」

多分の話。

みっくんにだって俺は会ってたかった。

勝負だってまだ、決着はついてない。

「はぁ…」

そう言って黒川は近場の岩に腰を下ろした。

「小岩がさ…」

いきなり喋りだす黒川は、何を言い出すのか?って思う。

「もし、会いたい奴に会えずに死んだらどうする?」

“死んだら”って言葉がすぐ近くにあるように…それも俺の真後ろにあるかのように感じさせる。

俺だったら…どうするんだろ。

「ククッ…“if”の話だよ。」

「でも…あるかも。だろ?」

「そりゃあな。今だったら何があってもおかしくねぇだろ。」

黒川は黙ってしまった。

もちろん、俺だってどうしたらいいかわかんねぇし、どうしようか考える余裕もねぇ。

もし、そこの草陰が、動いたら…

「う、動いた…!?」

「しっ。」

「鉄平くん?」

「…た、タッキー?」

「真田。大丈夫だよ、出てきても。」

「あ、あぁ…。」

「どうしたんだ?真田。」

真田は顔色が悪い。

何か、あったのかな?

…そういえば若菜が死んだって放送が…風祭も。

「別にどうもしねぇよ。お前ら…早く、逃げた方がいいぜ?」

「何を言い出すの?真田。別に逃げる必要なんてないでしょ?」

「早く逃げろ!風祭や結人を殺したのはコイツだ!早く逃げろ!」

真田の一言が信じられなくて、一瞬戸惑った。

身動きがとれなくなったかとも思った。

けど、腕を引っ張られて、体制がめちゃくちゃになりながらも走った。

「まったく、真田もよくやるよ。」

「もう、人が死ぬのは見たくねぇんだ。」

「僕の計画をぶち壊してくれてありがとう。このお礼はちゃんとさせてもらうから。」

「あぁ。楽しみにしとくぜ。」

一波乱…タッキーがやったコトは、事実?嘘?

見てない俺にはわかんないけど…それでも俺は信じていたい。





「眠たいですねぇ。」

「何や、。眠たいんか?」

「あ、はい。昨日…」

「寝てえぇよ。ほら、あそこに空き家がある。行くで。」

「はい。」



中には誰もいないようだった。

「すいません…」

「いや、えぇよ。俺がしとーてしとるだけやから。ほら、早ぉ寝ぇ。」

「あ、はい。」



は意外と早く寝てくれたみたいやったから、よかったわ。

ホンマに。

やっと、アイツと…

「いい加減出てきぃや。わかってんねん、そんなピリピリした殺気出されてんから。そろそろこっちも準備はOKや。さぁ、出てきぃ。」

その時、何がなんだかわからへんけど、光った。



「…なんてな、殺す気はねぇよ。」

「んなこと言っとっても、さっきまで殺気バリバリやったで?」

「正当防衛だって。」

「あれ?聞いてへんで、そんなん!!」

「さぁ、不破と…笠井…だっけ?きみら、武器とか所持品とか全部出してくれる?」

脅しみたいなことはしたくないんだけど…。

あんま好きじゃないし、醜い。

「コレが…お前らの武器?」

「あぁ、そうだよ。」

コイツらもこれだけじゃキツイよな。

銃と…ビデオテープ。

銃は確かに使えるみてぇだけど、大きいし、重たそうだし、大変だわ。

「さてと…」

「ちょ、どこ行くねん、山口!」

「散歩。」

「は?どうすんねん、コイツら…」

「任した!見張っといて。」

サルの方は動揺してるみてぇだった。

けど俺は、何も知らない振りをして歩いた。



「本当によかったよ!ありがとう、上原くん。」

「……」

上原…大丈夫なのか?

李潤慶…少しカタコトの日本語が入った…ドコのやつだ?コイツは…。

うっわー、俺にはもうわかんねぇよ!

頭がこんがらがってきた。

「上原君…伊賀君も。ねぇ、あの子誰?」

指を指されたのは俺で、“あの子”ってのは俺のことらしい。

「日生だよ、日生…。」

「俺は、日生光宏。」

「日生くん、って言うんだ。僕は、韓国ソウル市選抜のMF李潤慶よろしく。」

「あぁ。」

本当はこんな事言ってる場合じゃないのはわかってる。

ってか、コイツ、韓国人だったんだな…

「さあ、そろそろ始めようか、日生くん、上原くん」

はじめるって、何を始めるんだ?

何か、ゲームでも…なわけないかっ。

「伊賀くん、逃げてて。僕がやるから。」

「あぁ。」

「いったい、何をするんだよ!?」

「わかってる?僕たちはバトルロワイアルの真っ最中だよ?」

「まさか…」

“殺し合い”だ、なんて…

「そのまさかだよ。さぁ、はじめよう。3人で、殺し合いを。」

冗談言ってる場合じゃなくなっちまったんだよな。

でもまぁ、冗談でこっちの方をやってたら…殺される。

本気でやんねぇと、いけねぇんだよな。

まぁ、こっちのゲームも別の意味でおもしろそうだからな。

うん…やるか。

楽しませてくれよ、李潤慶。

あと、ドコにいんのかわかんねぇけど小鉄…。

俺、絶対にお前に会うまれ死なねぇんだからさ、お前も絶対死ぬなよ、小鉄。

…と、今は目の前の敵…だよな。

そうして俺は、ポケットから銃を取り出す。

やれやれっつって、上原もオノを取り出した。

「うっわー、スッゴイ当たりじゃん!!」

「だっろー。お前…おい、それ…」

「全部お前…の?」

「もちろんだよ。と言っても僕が最初から持ってたのは一つだよ!」

「じゃあ…」

「一つは伊賀くんの。」

「あと二つは…」

「間宮くんと、内藤くんから奪ったもの、ってとこかな。」

俺、普通じゃねぇのかな。

こんなときにでも冗談を言おうとしてる。

怖くないんだよなー、あんまり。

信じてっからさぁ、小鉄に会えること。

だからかな?

あとさ、笑えること、楽しむこと、面白がること…

そして俺はまたサッカーをするんだ。

まだまだたくさんあるんだよな。

だからさ、俺…

パァン―――――

シューと音がする。

その方を向くと、俺のもう一つの武器じゃねぇけど、武器。

サッカーボールがわれていた。

「よそ見なんかしてちゃ、ダメだよー?」

コイツ…マジだ…。





あの放送から3時間ぐらいが経過した。

俺ももう疲れきってる。

須釜って奴と二人で見張りを交代しながら、休憩ってことになって、今は俺が見張り中。

おきてて、一人だったら、いろんなことを考えてしまう。

余分なことを考えるけど、いつも同じことになってしまう。

…“死”。

それが今、俺の頭の中でグルグルと回っている。

風があたって涼しい中に、“死”の言葉があって、微妙に寒く感じる時がある。

早く時間が過ぎて、見張り交代しねぇかな?って先早に考えてる。

ここは、寒いし、怖い。

一人だから余計に、なんだ。

二人だったら話だって出来る。

こんな風に座ってる間にも、サッカーの練習がしてぇな。って、思う。

俺はまだ、No.2だから。

No.1は渋沢だ。

でも、渋沢だけじゃない。

全国にはもっと凄い奴だっているさ。

功刀さんだってそうだし…。

俺はまだ、勝ててなんかいない。

みんなに、俺を認めさせてやる…。

だからこそ、俺は、生き残るしかねぇ。

渋沢には負けねぇ…。

生き残らねぇといけねぇんだ。

そう思って、見張りをキツくする。

双眼鏡を覗いて、あたりを見回す。

そうして、みていたら、小さな影を見つけた。

……渋沢!?

影を見つけてからじっくり見ると、近くに渋沢と畑がいることがわかった。

焦るな、落ち着け。と、自分に言い聞かせる。

須釜を呼ぶか?

一人で考えるよりも、二人で考えた方がいいと思って、須釜を起こしに立ち上がる。

「…須釜。須釜、起きろ。」

すっげー小声で喋って誰かが近くに居ても大丈夫なようにする。

「…あれ?交代の時間ですか?」

「しっ!」

口元に人差し指をあてて、言う。

「近くに渋沢と畑が居るんだ。どうする?」

「そうですね…。しかけていってみますか?」

「あぁ。」

この静かな闇に銃声と悲鳴が響きわたるまで、あと、少しだ。











内藤 孝介 死亡

間宮 茂  死亡

【残り 32人】