第三章

 

 

 

正直俺は参加したくなか。

ばってん、家族の命がかかっとるっちゃー、参加せんわけにはいかんかった。

「貴方達は、勝ち組ですか?それとも負け組ですか?」

こんな問に俺らはどう答えればよかと?

「勝ち組…まずバトルロワイアルに参加してもらうわ。負け組では…今、ココで死ぬわ。ペアの相手のこともよく考えてあげてね。」

「ではランダムに。ペアで聞くわよ。風祭将君、若菜結人君。貴方達は、勝ち組?それとも負け組?あ、この線を越えたら勝ち組になるからね。」

「僕は…死にたくない。」

風祭は線を越えた。

「越えたら各自、バッグを受け取って。」

投げられたバッグを風祭は上手くキャッチしよった。

「結人…」

「ごめん、俺もまだ死にたくねぇ。それに、風祭を死なせるわけにもいかねぇ。」

フフッっと笑ったら監督は不気味じゃった。

俺は…どっちや?

勝ち組?負け組?



あれから、何人の人が呼ばれただろうか?

たくさんの人が線を越えていた。

「昭栄!お前何しとーと!?」

叫び声に顔をあげれば、高山昭栄が線の手前でたたずんでいた。

「俺は…死にたくなかです…。でも…」

「死にたくないんだろ!?だったら、こっちに来れば…」

「それも嫌っちゃ!人を殺しとーない。でも、そっちは…カズさん、お世話になりました。色々と…迷惑かけてスンマセンでした…」

「何言うとんね、昭栄!お前はまだ、こぎゃんとこで死ぬヤツやなかよ!死ぬなっ!!」

「カズさん…」

「あと3秒よ?3秒だけ時間をあげるわ。」

「………」

「ちょ、!?どないする…」

「ありがとーございましたっ!!」

「昭栄―っっ!!!」

「3…2…1…」

「うわっ!!」

「痛―…何するとね!?」

「あたしは、勝ち組に行きますよ。ただ、見てるのが…嫌だったの。アンタみたいなのは、嫌だよ、あたしは。」

…と高山くんは線を越えたわね。」

「うおっ!?いつのまに!?」

「昭栄…」

正直、死ぬ人を見たくなかった。

余計なお世話?


「あ、カズさん…」

「お前!スマン。」
「いいですよ、別に。」


「そか…」



それからというもの、みんなすんなりと越えていく。

「最後。はもう…だから、藤村成樹君。貴方は?」

「俺がコッチ行かなぁ、が死んでしまうさかいな。行かんわけないやろ。」

「はい。じゃあ、38名中36名参加ね。」


「あと二人は!?」

「上原!」

「あ…」

思い出したくもない真実。

それでも忘れられない。

俺たちの目に映ったあの二人。

「では、順番に出て行ってもらいます。Good Luck!」

いよいよ、本格的に動き出す。

BR法。

通称【バトルロワイアル】

ゲームは始まった。

「では、まず吉田光徳君、三上亮君。」

「あ…あ、亮っ!!」

…俺…信じてるからな。信じてるから…」

「うん…。」

信じられてるのなら…あたしも。

あたしも信じていたい。



「Good Luck!頑張ってね。」

その言葉と共にたくさんの人たちが送り出されて行く。

あたしは再び出会った時に、心から“仲間”だと思えることを信じたい。

。」

「あ、はい!?」

「行くで、俺らの番や。」

「Good Luck!貴方たち二人には期待してるわ。頑張ってね。」

あたしたちは、雲に隠れて銀色に光る月の下へと歩き出した。



「なぁ、三上くん。これからどうするつもりなん?」

「あ…?うるせぇよ、さっきから。暫く黙ってろ。」

こっちには、考えることが多すぎるっての。

静かにして欲しいっての。

「なぁ、一つ…聞きたいねんけど。」

「何だよ。」

「あの子…ちゃん、言うたっけ?どういう関係なん?三上くんとちゃんて。」

「…アイツは…アイツにとって俺はただの幼馴染でしかねぇよ。」

「幼馴染…か。」

アイツにとっては…幼馴染。

でも、俺にとっては…

クソ野郎…っ!



「ったく、何で俺はこんなヤツとペアになってんだー!?」

「ご、ごめんね、若菜くん。」

「俺ってやっぱくじ運悪ぃと想う?」

風祭とペアになった俺は、二人並んで道の真ん中を歩きながらブツブツ愚痴を言う。

「やっぱ!やっぱ、結人じゃん!?」

声の方向にハッとしながらも意識を集中させる。

「おい、俺だよ!一馬!」

「なんだ。かじゅまかよ…。」

「かじゅまじゃねぇ!一馬だっての!」

「ふーん。」

「真田。あんまり怒鳴らない方がいいよ。結構響いてる。」

「あ、悪ぃ…。」

杉原…?

あぁ、一馬のペアか。

案外、一馬もくじ運悪いのか?

「タッキー!」

「やぁ、カザくん!よかった。」

「僕も!タッキーに会えてよかった。」

「うん、本当に…。」

ふーん。

風祭と杉原って仲良いんだな。

「最後に…最後にカザくんに会えてよかったよ。」

杉原の言葉に“最後”なんて言葉があった。

意味がわかんねぇよ。

おまえら、仲良いんだろ?

どういうことだよ。

「ゴメンね、カザくん。最後だよ。バイバイ。」

あたりが真っ暗になる。

いつの間にか風祭は倒れてて…。

そして、定期的なリズムでピピピピと、音が鳴り始めた。

「ゆ…結人!!」

一馬の呼ぶ声。

俺のか…ってわかる。

「英士に…会いたかったなー。」

最後の願いも叶わねぇ…んだな。

俺は英士と一馬の…親友で、いつもいられた?

「か、一馬!?何泣いてんだよ!」

そうしている間も音のスピードは早くなっていく。

自分でも驚くくらい冷静でいられた。

「ゆ…と…」

「俺は、死ぬ。死ぬけどな!けど、俺はいつまでもいるから!一馬や英士の心の中に――」

バァンッ――――――

「ゆ、結人――っ!!!」



いつも、明るいヤツだったな。

俺と初めて会ったときも、ワイワイ一人で騒いでたっけ。

いつでも俺を…俺たちを楽しくしてくれてたっけ?

いつも、結人と英士と俺で一緒にいたのにな。

最強の三人だったのに、な。

何で俺は、お前の存在がこれほど大切だった事に今、気づくんだろ…。

お前のこと…。

お前のこと、過去形にしちゃうのもったいねぇよ。

「結…人。ゆ、と…起き…よ。なぁ。なぁっ。なぁ!俺たち、また一緒に…サッカーするんだ、ろ?なぁ…?起きろよ、結人!ック…うぅ…」

「ゴメンね、真田。悪いけど僕、生き残らないといけないから。」

「杉原…っ!!」

「僕を睨んだって、どうしようもできないよ。僕は医者じゃない。超能力者でもなければ、霊能力者でもない。僕にはどうすることもできないよ。」

「わかって…るよ!」

どうせなら…俺だって、俺だって死に…

「真田だって生きたいでしょ?だったら、仕方ないよ。」

「仕方ない?お前はそのために風祭だって…結人だって殺せるのかよ!他の方法だって、きっと…きっと…」

結人の名前を言ったことで、また涙が溢れてくる。

「他の方法なんてないよ。生き残るには殺して、最後まで残るしかない…」

「そんなことねぇよっ!やってもねぇのに、考えてもねぇのに!!そんなこと言うなよっ!かけろよ、俺らの運命にっ!」

「運命?僕はそんなの信じないよ。」

「お前は信じないかもしんねぇけど、俺は信じてる、から。」

「運命は変えられないよ。」

「そんなことねぇ!」

そうだよ、そんなことねぇよ。

結人が前に…言ってただろ?

『変えられないのは宿命。でもな、運命は変えられるんだぜ?知ってるか?なぁ、一馬。一馬と英士と俺でさ、運命変えて行こうぜ?俺らってさ、最強のトリオだろ?』

「だったら…変えてみてよ。」

「あぁ。」

俺が必ず、運命変えてやるよ。

見てろよ、杉原。

そして…結人。

いつか結人の仇、とってやるからなっ!



「結構歩いた、な。」

「そうですね。」

「早速やけど、聞かせてもらおうか?」

「……」

「何自分黙ってんね…ん…」

驚いたわ、ホンマ。

には驚かされてばっかかもしれへんわ。

集中しすぎやって、

たった一つの紙切れで。

「シゲさん…コレ…見てください。」

「ん?」

『頑張れよ、。オレも手伝うから。 兄ちゃんより』

「お前…いつ。」

そう言ったらニッては笑う。

エンピツなんかはバッグの中に一緒に配布されてた。

名簿なんかの裏は白紙で、メモとか出来たりする。

せやからはそこに書く。

『あたしのお兄ちゃんです。お兄ちゃんは今、政府で働いています。さっきの廊下でバッグの棚を運んできたのもそうです。』

「マジかっ!?」

「マジですよ。」

「それで、どないやねん?」

「秘密ですよ。まだまだ。」

は今でも余裕の表情を浮かべたままだった。



「おい、郭!どうした?」

「あ、ごめん。何でもない。」

今フッて何かがなくなった気がした。

空気のような…まるで結人や一馬みたいなそんな存在がなくなった気がした。

「ねぇ木田…」

「あぁ、わかってるよ。真田と若菜…探すんだろ?」

「うん…出来ればそうしたいなと思うけど。木田は?誰か探す人とかいないの?」

「まぁな。俺は特にいるわけじゃねぇから、お前の人探し、手伝ってやるよ。」

「そうしてくれると助かる。サンキュ。」

探すのは、会うため。

と、もう一つ。

…運命を変えるため、かな?

前に結人が言ってたこと、珍しいくらいにいい事で、印象に残ってる。

だから覚えてるのかな?

「さあ…行こう。」

わずかな希望と共に、俺は会いに行くよ。

結人、一馬…

ちゃんと見つけるから。

必ず会いに行くから。

生きててよ。



「あーあかんわぁ。もうこのあたりムシ暑いっちゅーねんなぁ。どーなってんねん、ココ。」

「うるさいって、サル。静かにしろよな。誰かに気づかれるぜ?」

「山口ぃ!お前もサルっちゅーんか!?」

「だから静かにしろっての。」

うん。

確かにこれだけ大音量なら仕方ないよな…。

俺…というか俺たちは静かなタイプだからな。

こうして、茂みに隠れていれば、滅多に見つかることはない。

でも、喋らないと、何も出来ないわけだし…

仕方ない、ここは小声で。

「不破…」

「笠井か。」

「どうするつもりなの?」

「どうするも何も、出て行っても、ここにいても警戒されるだけであろう。」

「まぁ、そうだね。でも、案外面白いかもよ?」

うん、不破は…そしてあの人たちはどんな反応してんのかな?

「どうしよっか?」

「どうしようか決めずにこんなトコまで来るなんて勇気あるなぁ。まぁ、どうしようもないなら、とりあえず動くなよ?」

…山口圭介!?

「悪いけど、気づいてたわ。」

「何言うてんねん、山口!俺が気づいてたわ!」

「お?そうだったっけ?」

「そうや!」

「今は、そんな事より…」

「コイツらやな…」

見つかっちゃった…か。

さぁ、不破大地、山口圭介、井上直樹。

これからが本番でしょ?

さぁ、どうしよっか?



「人の数って、やっぱり必要ですよね。

「そうやな。集めるか。」

「はい。」

なんや…俺が気遣うほどでもないみたいやな。

強くなったっちゅーんかな?

頼もしいで、

「シゲさん…」

「なんや?」

「最初に約束したこと、覚えてますか?」

「わかっとるって。殺したらあかんのんやろ?」

「はい。お願いします。これ以上…」

「わかっとる。安心せぇ。」

「…はい。」

殺さんのんやったらえぇんやろ?

せやったら、半殺しはえぇんか?

なぁ、

甘いで、自分は。

俺は一応優勝者としてココ、来てんねん。

「さぁ、誰から行こか?」

「あの、亮は…」

「亮?」

「三上亮。あたしの…幼馴染なんです。あたしが保証します。亮は絶対大丈夫。もし…もし人を殺してなんかしてたら、あたしを殺してもいいですよ。」

「えらい自信やな…。」

「亮を信じるって…決めましたから。」

「そか。せやったら大丈夫やろ。」

「はい。」

「えーっと、三上やっけ?誰とペア組んどんねん?そのペアによっては、の命も危ないで?」

「吉田…光徳、さんですね。」

「なんや、ノリックかいな。」

「知り合いですか?」

「そうやけど…。」

ノリックと三上、か。

大丈夫やとは思うねんけど、な。

ノリックは色んな意味で危険やさかいな。

三上の人殺しもノリックにかかっとったりしてな。



「っくわー!!走りてぇ!サッカーしてぇ!!」

「うるさい、日生。」

「上原はサッカーしたくねぇの?」

「そりゃ、してぇって。」

「じゃ、しねぇ?」

「は…!?」

「俺のサッカーボール!」

「何でボール持ってんだよ。」

「俺の…武器!」

「マジ…?」

「うっそ〜!」

日生…お前よくこんな状況で嘘なんかつけるよな。

大物だな、お前。

「ハハハハハッ!!」

「誰だっ!?」

「僕…わかんないかなぁ?」

声だけでわからない相手…。

東京選抜のヤツじゃない…。

他選抜のヤツ…?

「上原くんにはわかると思うんだけどなぁ…」

「はぁ!?俺?」

俺を指差して言う。

聞いたことはあるらしい声。

向こうが俺の名前知ってるくらいだから、会ったことはあるみてぇだけど。

「覚えてないのー?残念だなぁ。伊賀くんだって覚えてるって言ってたのに!」

「伊賀!?いるのか!?」

「上原。久しぶり…って程じゃないか。」

「あ、あぁ。」

「日生も、久しぶり。」

「ん、おう。」

「ねぇ、上原くん。そろそろ僕のこと、思い出してよ。」

だったら、いい加減…

「姿見せろよ!」

「やっぱり、顔見せないとダメなんだ?」

そう言って一歩前へと出る。

木の影になって見えなかった顔が明るく照らされる。

「嘘、だろ。何でお前が日本に…李潤慶!!」

「あ、やっぱり覚えててくれてたんだ!?嬉しいなー!」

俺たちは冗談抜きで、本気で…ヤバイヤツに会っちゃったみてぇだよ…。











風祭  将 死亡

若菜 結人 死亡

【残り34人】