うぅ…テストなんか……テストなんか…

大っ嫌いだ!!!





ありがとう





「なぁ、!テストどーだったー?」

「…聞かないでよ、誠二。」

「あー!!そんなに悪かったんだ!?」

「言わないで…。」

「へへへー。」

幼馴染の藤代誠二。

あたしは

同じクラスで隣の席。

「そういう誠二はどうだったのよ?」

「あ、俺―?俺はねー」

そう言って見せた誠二の英語のテスト。

そこには、あたしよりもいい点数があった。

「うそー!?」

「へへっ、ホントだよー!」

「めちゃくちゃショック…」

「わー、やっぱ俺、勝ったんだー?」

そう言って、誠二は、あたしのテストを取って見ようよする。

「ちょっと、誠二!何見ようとしてんのよー」

ガタッと音をたてて、席から立ち上がった。

「見たもん勝ちー!!やったー俺の勝ちー!」

「うるさいぞ!!」

あたしたちが立って、授業妨害をしていると、先生が怒鳴る。

「二人で廊下に立ってろ!」

「はーい。」

そうして、椅子をしまって、歩きだした…。



「あーあ、のせいだ。」

「はー?何言ってんのー?やっぱ、バカ―?」

「俺よりのがバカでしょー?」

「う…」

悪魔のような笑みを浮かべてる。

あたしには、言い返す言葉がない…。

誠二にバカって言われると、凄いムカつく…。

「ねぇ、あたしに勉強教えてよ!ね、お願い、誠二。」

「あ、無理。」

即答で、キッパリと答える誠二。

「えー!?何でよ!?」

「だって、俺も教えてもらったもーん!」

「誰にー?」

「渋沢先輩。」

これが、あたしと渋沢先輩の出会いだった。





『俺もさ、今日また教えてもらうから、一緒に来る?』

誠二に誘われた。

渋沢先輩…名前を言われても、正直パッとしなかった。

3年生とか、男子とか、正直、どうでもよかった…。

興味がなかった。

ただ、普通に話せて、楽しければよかったから。

でも、あたしはこれから、初めて恋をすることになっていた。



「あ、キャプテン!三上先輩!」

誠二は、渋沢先輩たちの方へ走って行った。

「ったく、さんも大変だね、あんなのと幼馴染なんて…」

笠井くんが誠二を見て言う。

「まぁ、ね。でも、楽しいからさ…」

そう、楽しいからいいんだ。

「君は…?」

「あ、って言って、誠二の幼馴染なんです。」

「そうなのか。よろしくな、俺は、渋沢克朗だ。」

「よろしくお願いします。」





「今日はさんも勉強しに来たのか?」

「そうっスよー!ね、。俺より英語悪かったもんな!」

「うっさいよ、誠二。」

「うわー三上先輩、助けてくださいよ。」

「自業自得だ。お前が怒らせたんだろ?」

「えー、そんなことないっスよ!」

三上先輩と誠二がふざけている。

見てて、面白い。

「うるさいだろ、アイツら。」

「え?」

「いつも、あぁなんだ。」

「そうなんですか?」

「あぁ。もう、アイツらは放っといていいから勉強を始めようか。

「あ、はい。お願いします…。」

「あー、二人で始めないでくださいよ。」

「うるせぇってんの、バカ代!」



誠二と三上先輩もおとなしくなって、本格的に勉強会が始まった。

「ここは、こうだから、こうなるんだ。」

「あぁ!なるほど!」

「わかったか?」

「はい!」

渋沢先輩の教え方は、とても上手くて、わかりやすい。

すぐに理解することが出来た。

「ムーっ!」

誠二が何か言ってる。

「キャプテーン!わかんないっスよ!」

「頑張って理解してくれ、藤代。」

「無理っスよ!何で、に理解できて、俺に理解できないのか、わかんないっスよ。ねぇ、キャプテン。何でなんスかー?」

「藤代、それは自分のせいじゃないのか?はしっかり自分で努力してるからな。」

このとき、なんとなく気づいた。

ドキドキしている。

これを、“恋”っていうのかな?





『あ、こんにちは。』

『あぁ、こんにちは。』

廊下ですれ違う渋沢先輩に声をかけてみた。

その日の午後…

「あれ?他の人は…?」

「三上と笠井は部活へ行ったが…藤代は…」

「あ、誠二なら呼び出しくらってましたよ、クラスの女の子に。」

「そうなのか…」

二人…二人きり?

この広い広い教室に…二人…。

「二人…だな。」

渋沢先輩が言ったことで、さらに意識をする。

「あの…」

「あの…」

二人の声が重なった。

「あ、すいません…どうぞ。」

「あぁ、いいのか?」

「はい。」

「いおきなりで悪いんだが…俺は、のことが好きなんだ。」

「へ…?」

「ダメっスよ、キャプテン。」

「藤代!?」

「誠二!?」

ドアの裏に居たのは、誠二だったんだ。

「俺も、が好きなんだ。」

どういうこと?

あたしの頭の中は真っ白になってきた。



「なぁ、…。お前はどっち?」

「え?」

「お前は、俺とキャプテンどっちをとる?」

「あたしは…?」

あたしは、どうしたいの?



「あたし…あたしは…渋沢先輩が好き、です…。ごめん、誠二…。」

「ちぇっ、まさかキャプテンを好きになるとは思ってなかったんだけどなー…。せっかく、同じ中学で同じクラスで隣の席になって、俺ら、スゲー仲よかったじゃん?これさ、運命とかじゃねぇのかな?なんて思ってたのになー。」

「ごめん…誠二。ごめん…」

「謝らないでよ、。あ…キャプテン。」

「何だ?」

「俺、今度から、勉強いいっスから。三上先輩に教えてもらうんで…。色々とお世話になりました。」

誠二は一人でペラペラと喋っている。

「俺、もう二人の邪魔しませんから。大丈夫です、安心してください。あと、キャプテン…。」

誠二が部屋を出て行こうとしてドアの前で立ち止まり、振り向いて言った。

を泣かせたら、俺が許しませんからね?」

「あぁ、泣かせないよ。」

あたしはこのとき思った。

誠二が幼馴染でよかった。

そして、先輩を好きになってよかった。

「それだけっス。」

誠二は教室を出て行った。

それを見て、渋沢先輩があたしの方へ向き直った。

「あ、あのさっきの言葉…信じていいのか?」

「あ…はい。」

「そうか…。」

「はい。」

「ありがとう。」



これからのあたしたち、まだどうなるかはわかんないと思う。

でも、先輩となら、これからの“道”は大丈夫だと思うんだ・

ねぇ、先輩?

こちらこそどうもありがとう。